2025年がDeFiのM&Aの年である理由

最近のM&Aの動向は、金融がついに伝統的金融と分散型金融を統合したエコシステムとなる時代に突入していることを示していると、エンザイム・ファイナンス(Enzyme Finance)共同創業者のモナ・エル・イサ(Mona El Isa)氏は語る。
◇◇◇
2024年第4四半期は、暗号資産(仮想通貨)関連のM&Aが急増し、大統領選後のセンチメントの変化により、2025年にはさらにM&Aが活発化する可能性があることを示した。
M&Aはすでに増加傾向にあり、ストライプ(Stripe)によるブリッジ(Bridge)の買収は、伝統的金融とデジタル資産の境界線がますます曖昧になっている傾向を浮き彫りにする重要な節目となった。
The Block Proのデータによると、2024年のM&Aは、まだ2022年に記録された過去最多の271件には及ばず、成長は続いているものの、そのペースは控えめだ。しかし、2025年にはこの記録が破られる可能性もある。ブラックロック(BlackRock)、フィデリティ(Fidelity)、グレイスケール(Grayscale)といった大手がビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のETP(上場取引型金融商品)を立ち上げ、さらにトランプ氏の当選が楽観論を後押しすることで、新たなM&Aの波が到来する舞台が整っている。
今、重要なのは、DeFi(分散型金融)領域でイノベーションを推進するために、M&Aがどのような意味を持つのかだ。
ギャップを埋める
ストライプのブリッジ買収やロビンフッドのビットスタンプ買収など、最近注目を集めた買収は、伝統的金融とデジタル資産の紛れもない融合を浮き彫りにしている。これらのM&Aは単なる事業拡大ではなく、安全なカストディと堅牢なリスク管理を求める機関投資家需要の高まりを満たすために、各社が自社サービスを強化していることを明確に示している。
過去、多くの議論はDeFiとTradFi(伝統的金融)の対立に焦点を当ててきたが、最近のM&Aは、金融が最終的に統一され、進化するエコシステムとなる新しい時代に突入する可能性を示している。伝統的金融は、DeFiへの移行において、特に規制遵守とアクセシビリティに関してクリアすべき課題がある。こうした状況を乗り切るために、TradFiは規制基準を満たすだけでなく、ユーザー体験を簡素化するエンタープライズグレードの解決策を必要としている。DeFiプラットフォームは強力だが、複雑なインターフェースのため、暗号資産に詳しくないユーザーにとっては難しい場合がある。
暗号資産に参入しようとする人々は、エンザイムのような透明性のあるオンチェーンインフラを備えたプラットフォームに注目すべきだ。
エンザイムは、スマートコントラクトや自動化された投資戦略、リスク管理ツールなどの自動化機能をユーザーフレンドリーなインターフェースに組み込んでいる。このアプローチにより、デジタル資産の管理が簡素化され、ブロックチェーン技術の複雑さを伴わずに規制遵守を確保できる。これらのツールを導入することで、伝統的金融機関はDeFiへの移行をより容易に行い、リスクを最小限に抑えながらコントロールを保つことができる。
変革の触媒としてのコンポーザビリティ
開発者や管理者にとって、統合は安全で統一されたインフラの中で、より広範なリソースにアクセスできる利便性をもたらし、イノベーションを促進する。このグローバルな動きは、Web2とWeb3の間のギャップを埋め、境界を徐々に解消して、統一されたイノベーティブな空間を形成する。これはまた、DeFi自体でも起きている。
M&Aは、複数のプロジェクトのリソース、テクノロジー、専門知識の統合を可能にし、異なるプロトコル間の相互運用性を強化することで、DeFiのコンポーザビリティを推進する上で重要な役割を果たす。
コンポーザビリティとは、さまざまなプロトコルやアプリを統合して連携させる能力のことで、ユーザーは複雑な金融ソリューションを構築できるようになり、DeFi分野の成長の触媒として機能する。異なるプロトコルやリソースの統合や融合が進むにつれて、開発者は新しい金融商品を構築できるようになる。
これにより参入障壁が下がり、開発者はゼロから始めることなく強力なアプリケーションを作成でき、ユーザーは相互接続されたサービスに簡単にアクセスできるというメリットが得られるようになる。
リキッドステーキングトークン(LST)は、コンポーザビリティの代表的な例であり、2025年に成長すると予測される主要なトレンドだ。ステーキング報酬を得ながら、同時に流動性や担保として利用できるこれらのトークンは、資本効率を強化し、DeFiエコシステム全体で資産の有用性を最大化する。
2025年のDeFiの未来
DeFiの未来は明るい。すでに実績のあるイーサリアム上のさまざまなDeFiは、継続的に開発と改善を続けている。これらの進歩は、より有利な規制環境、強化されたユーザーエクスペリエンスと相まって、大幅な成長の基盤を整えつつある。
DeFiの未来は、コンポーザビリティと相互運用性にある。ネットワークが投資の障害になることはあってはならないが、ネットワークの利用は複雑になることがある。複数のネットワークの複雑さを橋渡しする簡素化されたインターフェースにより、ユーザーは技術的な障壁ではなく、機会に集中できるようになる。
M&Aが続く中、暗号資産企業はDeFiの革新性を、規制、ガバナンス、市場競争という現実的な課題とバランスさせる必要がある。この統合は、安全なエコシステムを構築し、投資家や開発者の高まる期待に応える鍵となる。
|翻訳:CoinDesk JAPAN編集部
|編集:橋本祐樹
|画像:Shutterstock
|原文:Why 2025 Will Be a Year of M&A in DeFi