マスターカード、暗号資産の実験段階を超え「現実的なソリューション」に注力と発言
  • マスターカードや他の金融企業は、実験段階から現実の暗号資産ソリューションへと長い間移行してきたと、マスターカードはCoinDeskのインタビューで述べた。
  • マスターカードはNotabeneと提携し、マスターカードの「暗号資産認証(Crypto Credential)」システムを統合。複雑なウォレットアドレスの代わりにメールアドレスを使用して送金できるようにすることで、暗号資産取引をより安全でユーザーフレンドリーにする。
  • マスターカードは、トークン化とステーブルコインが暗号資産の未来の鍵になると見ており、2025年はオンランプ/オフランプソリューションの改善と暗号資産認証機能の拡張に注力している。

決済大手マスターカード(Mastercard)の暗号資産(仮想通貨)およびブロックチェーン部門責任者、ラジ・ダモダラン(Raj Dhamodharan)氏は、暗号資産を採用した伝統的な金融企業は実験段階を終え、現実的なソリューションに積極的に取り組んでいるとCoinDeskに語った。

「我々業界関係者の多くは、実験の域を超え、現実的なソリューションに移行しつつある」と同氏は述べ、マスターカードはすでに金融機関向けにステーブルコイン決済を可能にしていることを指摘。これらの金融機関は、ステーブルコインを使用して取引を決済することを選択でき、暗号資産採用における広範な傾向を反映している。

Notabeneとの提携

先週、マスターカードは暗号資産コンプライアンス企業のNotabeneとの提携を発表。マスターカードの「暗号資産認証(Crypto Credential)」をNotabeneのプラットフォーム「SafeTransact」に統合し、暗号資産取引をより安全でユーザーフレンドリーにする。

暗号資産認証システムは、暗号資産を主流にするためのマスターカードの取り組みの焦点であり続けている。このシステムにより、ユーザーは規制基準への準拠を確保しながら、複雑なウォレットアドレスではなくメールアドレスのような使い慣れた識別子を使用して資金を送金できる。このシステムは、受信者のウォレットが特定の資産を受け取れるかどうかを検証することで、誤った取引の防止にも役立つ。

「[暗号資産]が主流になるのを妨げている理由は、消費者がすでに知っている情報を使ってお互いを見つけられないことにある」とダモダラン氏は語った。

マスターカードの目標

同氏によると、マスターカードの目標は、従来の金融とブロックチェーンネットワークのコネクターとなり、新たなビジネスモデルを実現しながら、規制遵守を確保することだ。同社は、2025年にさらなる提携とユースケースを発表する予定で、暗号資産をグローバル決済に統合するというコミットメントを強化する。

「業界全体として、我々は[暗号資産]をできるだけ広く利用できるようにすることに非常にオープンになる必要がある」と同氏は述べた。

マスターカードは以前、バイナンス(Binance)を含む複数の暗号資産ネイティブ企業と提携していた。バイナンスが米国で一連の法的問題に直面したため、両社は2023年8月に提携を解除。マスターカードはその1年後、ユーザーが同取引所で暗号資産を購入することを再び許可した。

ダモダラン氏は「バイナンスは我々の素晴らしいパートナーだ」と述べたうえで、「我々は、オンランプとオフランプでバイナンスを支援できるいくつかの新しい方法で、同社と提携し続けている。このような話し合いは今後も続いていくだろう」と付け加えた。

暗号資産を「次のレベル」へ

ダモダラン氏は、トークン化の将来についても楽観的だ。同氏は、ブラックロック(BlackRock)やフランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)のような企業によるトークン化された現実資産(RWA)への需要の高まりに対応するためには、新たなビジネスモデルが必要になると語った。

「規制の観点から、預金がパブリックチェーン上でどのような形で表現されるのかが時間の経過とともに明確になれば、規模を拡大する方法に関しても次のレベルに進むことができると思う」と同氏は語った。

2025年、マスターカードの焦点の1つ目は、暗号資産と銀行業界の間のオンランプ/オフランプにあり、そのプロセスを可能な限りスムーズかつ安全にすることであり、2つ目は暗号資産認証製品の特徴と機能を拡張することだ。3つ目はステーブルコインだと同社は述べた。

「我々は、将来は預金とステーブルコインの両方が存在する世界になると考えている。なぜなら、預金にはお金があり、人々や企業が資産を保有する場所であり、ステーブルコインはオンチェーンで簡単に移動して決済できるからだ」マスターカードは語った。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:マスターカードの暗号資産・ブロックチェーン部門責任者のラジ・ダモダラン氏(Shutterstock/CoinDesk)
|原文:Mastercard Says It Has Moved Beyond Experimentation in Crypto, Focused on ‘Real Solutions’