暗号資産と適切な関係値を保ち、新たなフェーズへ。変化にチャレンジし続けるリミックスポイントの根源にあるもの。

ビットコインを資産として保有する動きが日本企業にも広がりつつある。そのパイオニアの1社が東証スタンダード上場企業で、エネルギー事業、レジリエンス事業およびメディカル事業を手がけるリミックスポイントだ。
2024年9月26日に総額15億円の暗号資産(仮想通貨)を購入すると発表、翌日27日にはビットコイン、イーサリアムなど、7億5000万円相当を購入した。以降、継続的な購入を行い、直近では2025年1月30日に「20億円分の暗号資産購入」を決議したと発表。これにより9月からの投資額は100億円に達する。2月3、4日にはそれぞれ5億円相当を購入し、当記事執筆時点で保有する暗号資産は取得価額で90億円に達している。
リミックスポイントは、2024年3月期の売上高204億8700万円、営業利益17億4300万円。2025年3月期(予想)は11月に開示した数値を2025年2月に上方修正し、売上高242億円、営業利益9億7000万円となっている。ビットコイン購入を開始した時には「余剰資金」が現預金で約140億円あり、それを購入に充てた。
企業のビットコイン購入は、アメリカでストラテジー社(旧マイクロストラテジー社)が先べんを切った。最近では、株式や社債を発行して市場から資金を調達し、ビットコインを購入しているが、リミックスポイントは手持ち資金を使い、「万が一、ビットコインの価値がゼロになっても本業に影響はない」という。
リミックスポイントがなぜビットコインをはじめとする暗号資産購入に踏み切ったのか、今後、何を狙っているのかを代表取締役社長CEOの高橋由彦氏に聞いた。
約140億円の余剰資金のキャッシュ・マネジメント
──2024年9月以降、積極的にビットコインを購入している。アメリカでのストラテジー社の取り組みなどを参考にしたのか。
高橋氏:実はまったく意識していない。
──9月26日の発表文に「余剰資金の一部をキャッシュ・マネジメント戦略の一環として、ビットコイン等の暗号資産に投資・保有することで、保有通貨の価値変動リスクを分散し」と書いている。
高橋氏:9月時点で、借入はほとんどない一方で、約140億円の現預金があり、当初は事業拡大のためのM&Aの資金と考えていた。だがM&Aは簡単ではないし、失敗する事例の方が圧倒的に多い。どうしても慎重にならざるを得ない。急ぎたくなかった。だが現預金として日本円を持っているだけでは、資本効率として悪い。ならば、暗号資産に投資しようとなった。
ご承知のように、2024年1月にアメリカで現物ビットコインETFが承認されたことで、ビットコインが金融資産として確立されたことが大きなきっかけとなった。さらに11月にトランプ氏が大統領に当選したことも大きい。11月の購入時の開示には「ビットコインの半減期後にこれまで繰り返されてきた価格上昇トレンドに入ったとみられるとともに、米国での大統領選挙の結果を踏まえて」と記したのはそのためだ。暗号資産の購入は現状、90億円まで達している。
■暗号資産保有状況
- ビットコイン:536.52BTC
- イーサリアム:901.44ETH
- ソラナ:1万3920SOL
- エックス・アール・ピー:119万1204XRP
- ドージコイン:280万2311DOGE
既存ビジネスに影響を与えないことが大前提

──アルトコインにも複数投資しているのは、ビットコインとは違った可能性を見据えているからか。
高橋氏:アルトターンを狙っている側面はある。過去、ビットコインが上昇局面を迎え、市場全体が上昇するなかで、アルトコインはより優れたパフォーマンスを見せている。ただし、基本はあくまでもビットコイン。そこは揺るがない。現実的に90億円のうち約74億円はビットコインだ。
またアルトコインの選択も、時価総額上位のものを選択している。我々は暗号資産取引所ビットポイントを運営してきたので、アルトコインについてもその知見を活かしている。
──本業が順調で手持ち資金が潤沢だったとしても、日本の場合、企業がビットコインを購入することはまだハードルが高いのではないか。
高橋氏:取引所を運営してきて、会社として暗号資産に馴染があったことは大きい。社員や経営陣にも暗号資産を保有している人は多い。そこが他の企業との大きな違いだろう。
だが、社外取締役には、弁護士も加わっており、説明などのプロセスは丁寧に進めた。暗号資産は価格変動が激しいので、万一、価格が下落したとしても既存ビジネスに影響を与えないことが大前提になる。将来の価格推移についてはポジティブに考えているが、必ずそうなるとは限らない。キャッシュが必要になったときに大きく下落している可能性はある。それらを想定して、既存事業に影響を与えない範囲内で購入している。
個人投資家が待ち望んでいた

──ビットコイン購入に対する反響はどのようなものだったか。
高橋氏:非常に好意的だった。ネガティブな声は現状、私の耳には届いていない。正直なところ、ここまで支持していただけるとは思っていなかった。ネット上でも当社の注目度が上がっており、個人投資家の皆さんは、大胆に投資する会社を求めていたように感じている。
──個人投資家が暗号資産に大胆に投資する企業を待ち望んでいた。
高橋氏:金融機関も暗号資産について十分理解しているだけでなく、その可能性の大きさにとっくに気づいているはず。金融資産は基本的にデジタルなものだからだ。今、株券や国債は紙では存在せず、すべてデジタル。つまり、デジタルである暗号資産にも抵抗感はないはず。
とはいえ、グローバルでみても、暗号資産に対する金融機関の態度は慎重だ。その意味でも、我々のように暗号資産に積極的に投資する企業を、個人投資家の皆さんは支持しているのではないだろうか。
暗号資産は、直近では、2022年のTerra/Luna事件(暗号資産Lunaを裏付け資産としたアルゴリズム型ステーブルコインTerraUSDの崩壊)や2023年のFTX崩壊で大きく下落した。流出事件や破綻、SEC(米国証券取引委員会)の厳しい規制、銀行から暗号資産関連企業が締め出されたりしても、そのたびに復活している。暗号資産には非常に大きな力があると言わざるを得ない。
Web3投資で新しいフェーズへ

──そうした目線や捉え方は、公認会計士であり、野村證券などでの経験を持つところから培われているのだろうか。
高橋氏:むしろ当初は邪魔をしたと思う。デジタルに対する理解はあったが、暗号資産には配当や利子がないから、基本的には需給で価格が決まるので、今まで向き合ってきた金融資産とまったく違う。初めはやはり戸惑いがあった。今となっては、もっと早期に暗号資産投資に踏み切っていればと思うこともある。
──直近のリリースでは「日本発暗号資産戦略企業へ」と記している。どういった事業を目指すのか。
高橋氏:暗号資産そのものへの投資のみならず、暗号資産/Web3に関連したビジネスに取り組んでいきたい。当社は2016年に暗号資産交換所を立ち上げた。直近のリリースは、リミックスポイントは再びビットコインの世界に戻ってきたことを言いたかった。
現在、エネルギー事業、レジリエンス事業、メディカル事業に取り組んでおり、エネルギー事業と蓄電池を中心としたレジリエンス事業はこれからも成長が予想されている。またメディカル事業はメガトレンドの1つと言われている。
今、我々が取り組んでいる事業は、例えばエネルギー事業は2014年頃にスタートし、いずれも直近10年くらいのもの。もともとソフトウェア開発からスタートしたが、事業環境の変化で厳しい時代もあった。トライ&エラーを繰り返してきた。だからこそ意思決定のスピードは早く、そうした企業風土が今回のビットコイン投資にも反映されている。
2013年頃に売上が最も減少した頃には、ウォーターサーバーの水はお客様用で社員は飲めなかったくらい。そこから小さな会社がさまざまなチャレンジを続け、2016年には暗号資産交換業(1番目のライセンス取得)を始めた。取引所を運営していたビットポイントジャパンは2022年5月にSBIホールディングスの子会社になり、23年3月には完全に手放した。現在、暗号資産を購入しているが、その元手はこのときの譲渡代金だ。だから、暗号資産から暗号資産への投資といえるかもしれない。今振り返ると、ビットコインの変動や進展とともにリミックスポイントも成長を続けてきた。
ビットコインがETF承認、さらにはトランプ大統領の誕生で、新しいフェーズを迎えているように、リミックスポイントもWeb3で新しいフェーズを目指していきたい。
|インタビュー・文:CoinDesk JAPAN 広告制作チーム
|写真:多田圭佑