SECの新サイバー部門、暗号資産に対する執行措置重視の姿勢に幕
  • 米証券取引委員会(SEC)の暗号資産(仮想通貨)執行部門の新しい名称は、SECが業界に対して取るアプローチの変化を物語っているようだ。
  • SECは同部門の名称から「crypto(暗号)」の文言を削除し、これまでのデジタル資産に重点を置いた姿勢から遠ざかった。

米証券取引委員会(SEC)は2月20日、暗号資産分野の犯罪者を追う任務を担う部門を縮小し、名称も大幅に変更すると発表。業界に対する積極的な取締り姿勢からの脱却をさらに強固なものにした。

この部門の名称はここ3年間で、「サイバーユニット」から「暗号資産・サイバーユニット」、そして現在の「サイバー・新興テクノロジーユニット」へと変遷しており、暗号資産をめぐる役割に置いていた比重を多少軽くしているようだ。

ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長(当時)は2022年、同執行部門がほぼ倍増の50人になると発表した。今回の発表では、この部門には「複数のSECオフィスにまたがる約30人の不正行為の専門家と弁護士 」が含まれるという。

「この部門は投資家を保護するだけでなく、イノベーションが成長する道を開くことで、資本形成と市場の効率化を促進する」とマーク・ウエダ(Mark Uyeda)委員長代行は声明の中で述べ、ローラ・ダレアード(Laura D’Allaird)氏が刷新された同部門のトップに就任することも発表した。

ウエダ氏の言葉は、2022年にゲンスラー氏が同部門は 「暗号資産市場の投資家に付け込もうとする者 」を追求すると述べたことに象徴される、暗号資産に焦点を当てた姿勢とは対照的である。

トランプ大統領は米上院がポール・アトキンス(Paul Atkins)元委員の委員長への指名を検討する間、共和党のウエダ氏を委員から昇格させ、暫定的にSECを指揮させることにした。ウエダ氏は委員長代行だからと言ってただ手をこまねいているわけではなく、すでにSECの改革を進めており、特に暗号資産に対する過去の強い不信感を和らげようとしている。

ウエダ氏は、SECに暗号資産タスクフォースを結成し、同じ共和党のへスター・パース(Hester Peirce)委員をトップに任命。サイバー・新興テクノロジーユニットはそのタスクフォースの「仕事を補完する」ことになっている。「ブロックチェーン技術や暗号資産に絡む不正行為」の追跡に加え、同部門は人工知能の違法な利用、ハッキング、その他のサイバーセキュリティ上の過失を監視する。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:SECの委員長就任の承認を待つポール・アトキンス氏(中央)、ウエダ委員長代行(左)、パース委員(Jesse Hamilton/CoinDesk)
|原文:New SEC Cyber Unit Closes Chapter on Agency’s Crypto Enforcement Emphasis