ビットコイン現物ETF、過去最大の9億ドル超が流出──裁定取引の魅力が失われ、投資家が資金を引き出す
  • ビットコインとイーサリアムの現物ETFは、キャリー取引の魅力が薄れる中、大規模な償還が行われている。
  • 市場の急落により、シカゴ・マーカンタイル取引所のBTC先物ベーシスは4%まで下落した。

2月25日は暗号資産(仮想通貨)市場にとって荒れた一日となり、ビットコイン(BTC)が8万7000ドルを割り込み、3カ月ぶりの安値を記録したことで、市場全体が下落した。さらに重要なのは、アメリカのビットコイン現物ETF(上場投資信託)から投資家が資金を引き揚げるペースが前例のないほど速かったことだ。

SoSoValueのデータによると、11のBTC現物ETFでは9億3778万ドル(約1406億6700万円、1ドル=150円換算)の純流出が記録され、2024年1月に取引が開始されて以来、1日当たりの償還額としては最大となった。

フィデリティ(Fidelity)のFBTCが流出額が最も多く3億4465万ドル(約516億9750万円)、次いでブラックロック(BlackRock)のIBITが1億6437万ドル(約246億5550万円)の流出となった。残りのファンドは、それぞれ1億ドル(約150億円)未満の流出だった。

これらのETFに対する投資意欲の減退は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されているビットコイン先物のプレミアムの減少が原因の可能性がある。これにより、現物と先物の裁定取引の魅力が損なわれた。こうしたBTCとイーサリアム(ETH)のキャリー取引は、現時点ではアメリカの10年物国債の利回り(記事執筆時点で4.32%)をわずかに上回る程度だ。

この戦略は、2024年始めから機関投資家に広く支持されており、現物ETFを購入すると同時にCME先物を売り、価格変動リスクを回避しながらプレミアムを確保するというものだ。

Velo Dataによると、CMEのビットコイン先物の1カ月ベースの年率換算プレミアムは25日に4%まで下落し、ほぼ2年ぶりの最低水準となった。12月のほぼ15%から大幅に減少している。つまり、キャッシュ・アンド・キャリー戦略で得られる利回りは、2カ月間で劇的に低下した。

イーサリアム先物におけるベーシスも、約5%まで急落している。アメリカのイーサリアム現物ETFでは、25日に5000万ドル(約75億円)の資金流出が確認された。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:U.S. Bitcoin ETFs See Record Daily Outflow of Over $930M as Carry Trades Lose Shine to The 10-Year Treasury Note