検索サービスの「ヤフー」を傘下に持つZホールディングス(HD)とLINEが、経営統合することで基本合意した。グーグル、アマゾン、アリババ、テンセントなどの米中企業が圧倒的な強さを見せるインターネットの世界で、両社はし烈な競争に立ち向かっていく。
ZHDとLINEは11月18日午前、両社に加えて、ZHDの4割以上の株式を持つソフトバンクと、LINEの過半数株式を握る韓国のネイバー(NAVER)の4社が、統合の内容に基本合意したと発表した。
TOBでLINEを非公開化
ネイバーとソフトバンクは、50:50の統合会社を設立し、ZHDとヤフーの最高経営責任者(CEO)を務める川邊健太郎氏が社長兼共同CEOに、LINEの出澤剛CEOが共同CEOに就任する。また、ネイバーとソフトバンクは共同で、LINEの非公開化(上場廃止)を目的とする公開株式買付け(TOB)を行い、最終的にヤフーとLINEをZHDの子会社にする。
インターネット市場における米中企業と日本企業との差は広がる一方で、今後のグローバル市場で戦うためには、ZHDとLINEの経営資源を集約する必要があると、両社は共同発表文の中で説明。
2社は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、メッセンジャー、メディア、スマートフォン決済を中心とする基盤サービスで圧倒的な地位を確立させていく一方、世界をリードする「AI(人工知能)テックカンパニー」を目指していく。
経営統合のシナジー:ビッグデータ、eコマース
ヤフーとLINEを統合させることで期待できるシナジーとは何か?
平均月間利用者数が6700万人を超えるヤフーに対して、LINEは国内で約8200万人の月間アクティブユーザーを抱える。相互送客によって、ユーザー基盤はさらに強化されると、両社は共同発表文で述べた。
また、ZHDとLINEがそれぞれ構築してきたビッグデータを活用することで、国内市場におけるすべての企業が今まで以上に効率的なマーケティング活動を行うことが可能になると、加えた。
「PayPayモール」、「ヤフートラベル」、「一休.com」、そしてZHDが今月に買収を完了したZOZOが運営するファッションECサイト「ZOZOTOWN」…。ヤフーのeコマース事業と、メッセージアプリで築いたLINEのコミュニケーション・プラットフォームを掛け合わせれば、eコマースにおける集客効果が期待できる。
フィンテック事業の強化
LINEは、みずほフィナンシャルグループと組みオンライン銀行の設立を進めている。一方、野村ホールディングスとは共同で、国内株式を中心にLINEアプリで購入できるサービスを始めた。今回の経営統合により、LINEとZHDはスマホ決済を含む金融事業におけるユーザー基盤をさらに広げながら、フィンテック事業の強化を進めていく。
18日の発表文によると、ZHDは今回の経営統合で三菱UFJモルガン・スタンレー証券を、LINEはJPモルガン証券をファイナンシャル・アドバイザー(FA)に起用している。
文:佐藤茂
写真:Shutterstock