米連邦準備制度理事会(FRB)は11月15日(現地時間)、ステーブルコインがもたらす危機は国際経済に大混乱をもたらす可能性があり、現状を守るために発行者が取らなければならない手順の概要を説明した。
FRB「金融安定性報告」の警告
11月に発表された半年ごとの「金融安定性報告(Financial Stability Report)」の奥深くに秘められた中央銀行の予想は、ステーブルコインがもたらす最悪の結果をもとにしている。すなわち、コインの保有者が一斉にパニックになり、法定通貨への交換を要求する「取り付け騒ぎ」だ。
ステーブルコインは、その価値が法定通貨に裏付けられた仮想通貨。ビットコインのボラティリティは非難の的となるポイントだが、ステーブルコインは法定通貨あるいは通貨バスケットに1対1で裏付けられ、安定した価値を維持するよう設計されている。
FRB報告書の懸念は、ステーブルコインの機能に問題が発生する可能性があること──例えば、運用、流動性、信用などだ。「こうした信用の喪失は、取り付け騒ぎにつながる可能性がある」と報告は記した。
「極端なシナリオでは、コインの保有者は法定通貨に交換できず、国内あるいは国際的な経済活動、資産価格、金融安定に深刻な結果をもたらす可能性がある」
ステーブルコイン発行者に求められる手順
6月にリブラ構想が発表されて以来、FRBは国内、海外の規制当局とともに警鐘を鳴らし続けている。デジタル通貨の問題を超え、SNSとの統合は悲惨な結果をもたらす可能性があると報告書は警告した。
「フェイスブックのリブラのような、既存の大規模かつ世界的なSNSが構築するステーブルコインは急速に、広く普及する可能性がある」と報告書は記し、ラエル・ブレイナード(Lael Brainard)FRB理事の先月の発言を繰り返した。
今は1つの文書にまとめられているが、報告書は規制当局の懸念を確固たる公式のものとし、ステーブルコインがもたらす破滅的な状況を避けるために求められる手順を記した。
報告書は次のように記した。
- 発行者はステーキング・メカニズム(法定通貨などへの裏付け)の仕組みを開示しなければならない。
- 発行者は不正利用を防ぐためにKYC(顧客確認)記録を維持しながら、顧客データのプライバシーを保護しなければならない。
- 発行者はサービス利用規約を開示しなければならない。
- 発行者は、原資産に対して権利を有する場合は顧客に通知しなければならない。
「G7が提言したとおり、『いかなるグローバル・ステーブルコイン・プロジェクトも(この報告書で示された)法、規制、監督に関する問題とリスクに、明確でリスクに対応した適切な設計と規制の遵守を通して、十分に対処できるまで、運用を開始するべきではない』」
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸
写真:Federal Reserve image via Shutterstock
原文:Stablecoin Crisis Could Wreck Global Finance, Fed Warns in New Report