「暗号資産は史上もっとも利益率の高い資産でありスタートアップ」成田悠輔氏が見据えるお金と資本主義の行く末

昨年末、経済学者・データ科学者・事業家の成田悠輔氏のX投稿が、2万を超える「いいね」を集め、ネット上で話題となった。

また、同時期に行われたイベントでも「暗号資産は信じられないぐらいうまくいっている。人類の歴史上、最も成功した金融商品を作り出すことに成功している。実は驚くぐらい短期間に、驚くぐらいのことを実現していると思う」と語っていた。

このとき、成田氏はブロックチェーンの可能性についても言及し、「ブロックチェーンのもう1つの側面は、公共・公益を更新できることにある。暗号資産の面白さは、金融政策的なものや社会保障的なものを貨幣のデザインの中に埋め込めることだと思う。例えば、貨幣の配分ルールの中にベーシックインカム的なものを埋め込むとか、CO2排出量や森林保護のような公共目的に紐づいて発行量を調整することができる」と指摘した。

「新しいWeb3ベースの資本主義によって、今の市場経済と国家による政治を単一の制度で担うような未来があるのではないか」と語った成田氏が、その思いを縦横に書き記したような新著が『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』(文春新書)だ。

目次を見ただけでも、その刺激的な内容が伝わってくる。並べられた見出しをいくつか抜粋すると、

第1章 暴走 すべてが資本主義になる
・怪しい占い師としての資本主義
・時間と意味と新大陸
・来る来る詐欺を超えて:計算網産業革命…

第2章 抗争 市場が国家を食い尽くす
・お金は意外に若く狭い
・お金とデータのデッドヒート
・官僚もネコでいい:市場原理主義的社会保障
・市場と国家の離婚と再婚
・測れない経済へ

第3章 構想 やがてお金は消えて無くなる
・経済はデータの変換である
・データを食べる招き猫が経済を自動化する
・貨幣発行自由化の極北
・市場・国家・共同体のパッチワーク

といった具合だ。再度補足しておくと、上記はあくまで見出しの一部を抜粋しただけ。実際には、より幅広く、刺激的な内容が詰め込まれている。暗号資産の未来、お金の未来、さらには経済、社会、国の未来を誰かと議論したくなる、そんな1冊だ。

最後に1文だけ、刺激的かつ、具体的なビジネスにつながりそうな文章を紹介したい。

「すべてがデジタルデータなので、未来に起こる何かに紐づけた証券や保険をつくることもやりやすくなる。これまでは株式会社でしかできなかった未来の価値の先取りを個人や小さいプロジェクト単位でできるようになる。たとえば将来の稼ぎに応じて返済額が変わり、失業者になったら1円も返済しなくてもいいが、ビリオネアになったら10億円くらいは返済する成果返済型学生ローンを想像してみる。ある意味で個人の株式会社化である」

|文:CoinDesk JAPAN編集部
|撮影:多田圭佑