ブラックロック「BUIDL」のようなトークン化MMFを日本でも──Progmat主催のコンソーシアムが共同検討開始

グローバルで人気の「トークン化MMF」を日本でも実現し、さらにステーブルコインを組み合わせて、より高度なサービスを提供する──Progmat社が主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム」(DCC)は、取引に加えて利払いや決済もブロックチェーン上で完結し、セキュリティ・トークン(ST)化のメリットを最大化することを目的とした「オンチェーン完結型STワーキング・グループ(WG)」を設置、共同検討を開始する。3月4日、Progmatが発表した。

リリースによると、国内のST発行累計額は1740億円超に達し、2025年には3411億円超まで拡大することが想定される。ただし、個人投資家をターゲットとした不動産ST(不動産を裏付け資産としたST)が大部分を占め、ST債、特に機関投資家向けの商品組成は限定的だったという。

〈リリースより〉

一方、海外では、米国債やMMF(マネー・マーケット・ファンド)のトークン化が進展しており、市場規模は6000億円弱(約39.9億ドル、1ドル150円換算)に達しているという。特にブラックロック(BlackRock)のBUIDL(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund)は、オンチェーンでの高度化が進み、日次金利付与や日中複数回の償還が可能になっている。

〈出典:https://app.rwa.xyz/treasuries、リリースより〉

さらに、2024年末にBUIDLを抜いて世界最大のトークン化MMFとなったUSYC(US Yield Coin)の発行を手がけるハッシュノート(Hashnote)社 を、米ドル建てステーブルコインのUSDC(USDコイン)の発行元であるサークル(Circle)社が買収。トークン化MMF、さらにはSTとSCを組み合わせた(ST✕SC)トークン化(オンチェーン化)競争はグローバルな一大トレンドとなっている。

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Progmat社は、リリースに「Hashnote社を買収したCircle社のように、STとSCの双方を対象にプラットフォームを提供している国内で唯一の組織」と記し、DCCの運営事務局として、共同検討では、オンチェーン完結型社債およびオンチェーン完結型MMFの初期的スキームと論点を議論していくとしている。

オンチェーン完結型STワーキング・グループは、4月にキックオフ、2025年夏に報告書を公表、さらに報告書を踏まえた個別の商品組成プロジェクトを2025年から実施することを目標としている。 

〈オンチェーン完結型MMFのスキーム図:リリースより〉

ファンマーケティング円滑化のワーキンググループも

また同ワーキンググループに加えて、トークン発行者と投資家の結びつきを強化し、より良い顧客体験を創出することを目的に、「STデータ連携円滑化ワーキング・グループ」を設置すると発表。現時点では法令面の制約などから、データ共有/活用には作業負荷が高いなどのハードルがあるが、ST取引約款を中心に契約構成を整理し、データを円滑に利活用できる下地を整理するという。

具体的なユースケースとしては、保有残高に応じて優待を付与するといった「攻めのデータ活用」や、万一の際に迅速に権利者を特定し、債権者保護の対応を実行するなどの「守りのデータ活用」をあげ、「これが可能になると日本でもハイイールド債市場を創生しやすくなる」とリリースに記している。

STデータ連携円滑化ワーキング・グループは4月にキックオフ、9月に報告書を公表する予定だ。

〈リリースより〉

国内でのステーブルコインの取り扱いが、まもなく現実となりそうな2025年、日本でもMMFなどの「金融商品のトークン化」が進展しそうだ。

|文:増田隆幸
|画像:リリースより