まだ間に合う!仮想通貨(暗号資産)の確定申告、でも損益計算の「勘違い」が命取り?:クリプタクト

確定申告の締切(2024年・令和6年分は2025年3月17日まで)が迫る中、仮想通貨取引の損益計算に追われている方も多いのではないでしょうか?

特に、仮想通貨取引の確定申告に慣れていない人にとって、正しい計算方法を理解しないまま申告してしまうと、思わぬペナルティを受ける可能性があります。

また、「問題にならない程度の利益しかないはずだから」と損益計算をそもそもしていない場合、予期せぬペナルティを受ける可能性もあります。

本記事では、仮想通貨(暗号資産)の確定申告における損益計算のよくある勘違いと勘違いによるリスクを紹介し、締切直前でも正しく申告するためのポイントを解説します。

1. 仮想通貨(暗号資産)取引の利益は確定申告が必要?

そもそも、仮想通貨(暗号資産)で利益は課税対象となるのか、自分で確定申告を行う必要があるのかと疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。

仮想通貨取引の利益は、原則、雑所得に分類され、課税対象となります。

雑所得の所得税は、1年間での他の所得(給料や副業の収入など)と合計して計算します。これを「総合課税」といいます。総合課税では、所得が多いほど税率が高くなる仕組み(累進課税)が採用されています。

そして、雑所得は源泉徴収(給与や報酬を支払う事業者(会社)が、給与の支払い時に所得税などを差し引いて国などに納付する制度)制度ではなく、さらに年末調整の対象ではないため、一定額以上の利益が出ればご自身で損益計算を行い、確定申告が必要になります。 

例えばサラリーマンが副業として仮想通貨取引を行った場合20万円超、個人事業主や主婦・学生など給与所得が無い人の場合は、仮想通貨以外の収入と合わせ、合計48万円超で確定申告が必要となります。 

なお、上記はひとつの目安であり、たとえば以下の条件に当てはまるサラリーマンの方は確定申告が必要となり、仮想通貨の所得がこの金額以下でも所得として申告する必要があります。

  • 給与収入が年間2,000万円を超える人  
  • 給与所得や退職所得以外の所得金額(仮想通貨による所得を含む)の合計額が20万円を超える人  
  • 2か所以上から給与をもらっている人  
  • 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を初めて受ける人  
  • 雑損控除、医療費控除などを受ける人や、寄付控除の適用を受ける人(※ふるさと納税の場合は納付先が6自治体以上の場合)   
  • 配当控除の適用を受ける人

「それほど利益が出ていないから計算しなくてもいい」と思っている場合でも、上記に該当する場合は計算が必要となります。

2. 損益計算のミス・誤認によるリスクとペナルティ

申告漏れによる加算税・延滞税の発生

確定申告で間違った申請をすると、税務調査で指摘され、追徴課税を受ける可能性があります。
具体的には、過少申告した場合に加算される「過少申告加算税(10~15%)」や無申告が発覚した場合に課される「無申告加算税(15~20%、ただし税務署指摘後は40%)」、加えて延滞期間に応じて課される「延滞税(2.4%~14.6%)」があります。

誤った申告で税務調査の対象になる

仮想通貨取引はブロックチェーン上に記録されており、税務署が追跡可能です。税務署には個人の資産や仮想通貨取引所における取引に対しての調査権限(たとえば「質問検査権」や「帳簿書類の提示・提出要求権」)があり、調査が必要と認められる場合、質問や帳簿書類などの検査・提出を求めることができます。
取引履歴の不整合が見つかると、過去の取引までさかのぼって調査されることもあります。

悪質なケースでは重加算税の可能性も

意図的な申告漏れと判断された場合、最大で40%の重加算税が課されることがあります。

3. 仮想通貨の確定申告でよくある損益計算の「勘違い」

仮想通貨同士の交換では利益は発生しないと勘違い

仮想通貨(暗号資産)同士を交換しただけで、日本円に換えていないから利益は出ていない。自分のものだし、保有しているだけと同じと思っている人も多いようです。

日本円自体が増えていなくても、仮想通貨(暗号資産)同士の交換によって税務上の損益は発生します。

これは、実際に仮想通貨(暗号資産)を日本円に換金していなくても、税務上は「一度仮想通貨(暗号資産)を売却」し、その売却で得た日本円を使って「別の仮想通貨(暗号資産)を取得した」とみなされるためです。

それゆえ、売却時の価格が取得単価よりも高ければその差額が利益となります。

過去から保有している通貨があるのに今年の取引だけを見て計算

仮想通貨取引の実現損益は「総平均法」か「移動平均法」で求めた取得単価をもとに計算されます。申請をしない場合、個人の方であれば「総平均法」、法人の場合は「移動平均法」が自動適用される事となっています。 総平均法とは、1年間の購入金額を平均して取得原価(平均取得単価) とする方法です。

ただし、たとえば2023年以前に同じコインの売買履歴がある場合、2024年分の仮想通貨の損益を計算するには、過去のすべての売買履歴を参照して計算する必要があります。

それゆえ直近の取引だけを見て、直感的に損をしていると思っていても、実際には利益が出ているケースも少なくないのです。

また、取引頻度が多く「いったい自分の利益はいくらなのか?」、「持っているコインの取得価額と含み損はいくらなのか?」が分からず、年末ですべての仮想通貨(暗号資産)を日本円に売却し、年初の日本円投入金額との差額を利益とする、いわゆる「年末円転」を行う方がいらっしゃいますが、年末円転をする場合は、過去の損益計算ができている場合、もしくは今年度から投資をスタートした場合であり、過去から投資をやっているものの、今年度は年末円転をしたとしてもその年の正しい計算はできません。

また、保有を続けようと思っている仮想通貨も売却することになり、その時点で損益認識することになるため、2024年のように年末にかけて価格が上昇していた局面だと、所得が大きくなり、税金を多く払うことになるケースがあります。

こうした課題には「クリプタクト」のような仮想通貨の損益計算ツールなど活用して取引履歴が適度に見れる状況にしておくことが有効な対策となります。

複数の取引所の損益を単純に足し合わせて年間の損益を計算

取引所に表示されている損益は、税務上の損益と異なる場合があるため、注意が必要です。

仮想通貨(暗号資産)の損益計算はコインごとに行う必要があり、複数の取引所で同じコインを取引した場合、各取引所の取引履歴をすべて参照して損益を計算しなければなりません。

例えばビットコインを複数の取引所で売買した場合は、各取引所におけるビットコインの全売買履歴を参照して、損益を計算する必要があります。取引所のアプリ上の損益表示のみを確認して「確定申告は不要」と判断するのは、必ずしも正確ではない場合があるため注意が必要です。

4. 締切直前でも正しく申告するためのポイント

確定申告の締切が迫る中、仮想通貨の計算ミスは致命的なリスクにつながります。
損益計算の方法や損益認識されるタイミングについて正しく理解するようにしておきましょう。

損益計算の方法、損益認識されるタイミングについて詳しく知りたい方はこちらの記事でも紹介しています。

総平均法・移動平均法どちらがお得?自分に合う仮想通貨の損益計算法

【税金支払い時に注意】仮想通貨の取引で損益認識されるタイミング6つを事例付きで紹介

しかし、確定申告の締め切りが迫っているものの、中には

  • 取引量が多くエクセルでの計算が大変そうで手を付けられていない
  • 複数の取引所で取引をしたため、コインごとの計算が面倒
  • 取引所での売買だけではない取引をしたため、どのように処理すべきかわからない取引がある

といった状況の方も多いことでしょう。

そんな場合は、「クリプタクト」のような仮想通貨の損益計算ツールを活用することで、効率的かつ正確な損益計算が可能になります。

追徴課税は困るし、正確に効率よく確定申告を終わらせたいとお考えの方はぜひお試しください。

|文:伊藤里香/pafin編集
|監修:村上裕一

村上裕一公認会計士事務所・代表税理士。大手監査法人・税理士法人での豊富な経験を積んだ後、Web3(ブロックチェーン、暗号資産・仮想通貨、NFT、ブロックチェーンなど)の専門税理士として、多くのクライアント(個人及び企業)を支援。株式会社pafinの仮想通貨の損益計算ツール「クリプタクト」のブログも監修。監修した記事は、「仮想通貨(暗号資産)の税金基礎と計算方法、対策も解説」など。

クリプタクト:https://www.cryptact.com/
defitact:https://www.defitact.com/

※編集部注:CoinDesk JAPANは「暗号資産」を表記として使っていますが、ここでは原文を尊重しています。