不動産STの発展、NFT×ウェルネス──注目企業のWeb3活用事例を一挙紹介【N.Avenue club Summit企業発表会 Part3】

CoinDesk JAPANを運営するN.Avenueが2023年7月に開始した「N.Avenue club」は、Web3をリサーチ・推進する企業リーダーを中心とした、国内最大の法人会員制Web3ビジネスコミュニティである。
本記事では、2月27日に開催した年に一度の「N.Avenue club Summit」で自社の取り組みや事業内容を発表した法人会員企業19社(一部掲載不可)の様子をPart3としてお届けする。
同日行われた自民党デジタル社会推進本部web3担当の塩崎彰久議員による特別セッションなどは既報のとおり。
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⑪株式会社リミックスポイント
代表取締役社長CEOの高橋由彦氏が、同社の事業変遷と暗号資産への投資決定の背景、今後の展望について語った。

2004年設立の同社は、2016年3月に暗号資産(仮想通貨)交換業を開始し、2023年3月に同事業を営む株式会社ビットポイントジャパンの全株式を売却。「FTXやLUNAの事件で業界の規制が厳しくなり、事業展開が困難になったと感じた」と高橋氏は振り返った。
同社は現在、エネルギー事業、レジリエンス事業、メディカル事業及び金融投資事業の4つを事業の柱として展開。金融投資事業については、総資産約200億円のうち100億円を暗号資産への投資に充てていると説明した。
当初はM&Aのために資金を確保していたが、昨年、暗号資産市場の動向を注視する中で暗号資産への投資も検討し始め、「トランプ政権誕生を機に、暗号資産市場の成長を見据え、本格的な投資を決めた」と明かした。同社は、暗号資産交換所運営の経験があり、暗号資産に関する知見もあることから、「今回の暗号資産への大規模投資について違和感はない」とし、また、既存事業への投資については、既存事業から生まれる営業キャッシュフローで資金を賄える点も決断を後押ししたという。

最後に高橋氏は、一度は暗号資産交換業から撤退したが、「この世界にもう一度戻りたいという思いがあった」と述べ、さらなる成長に意欲を示した。
⑫株式会社NTT Digital
セールス&マーケティング部の平井優生氏は、同社のWeb3インフラ事業と最新の取り組みについて語った。設立間もない同社はWeb3領域での信頼できるインフラ構築をミッションとし、デジタルウォレットやブロックチェーンバリデーター事業を展開。企業間の連携を促進し、新たな価値を生むことを目指している。

直近の事例として、企業と消費者をつなぐWeb3プロジェクト「web3 Jam」を紹介。NFTといったトークン保有状況からユーザーを分析し、マーケティングに繋げる試みだと説明した。
その第一弾として、ウェルネスをテーマにしたキャンペーン施策「はぴウェル応援団」を実施したと説明。ユーザーは各企業が提供するミッションを達成することで、サンリオのキャラクターなどのNFT(SBT)を獲得できる仕組みだと説明した。「Web3に馴染みのないユーザーでも簡単に利用できる設計」にしたと述べ、2025年1月の開始から4万個近いNFTが発行されたと明かした。

平井氏は事業を通して、サーバーのメンテナンスコストが低い点などWeb3のメリットを感じていると述べ、企業間の相互送客や新しい社会価値の創出を目指すと話した。
⑬株式会社大和証券グループ本社
経営企画部デジタルアセット推進室長の斉藤貴裕氏が、セキュリティトークン(ST)をはじめとする同社のデジタルアセット戦略について語った。大和証券グループは2016年頃から、STの発行・取引に注力しているほか、子会社のFintertechでは暗号資産を担保とするローンサービスなどを提供するなど、Web3領域への取り組みを強化している。

不動産ST市場は2023年度の発行額が842億円に達し、急速な成長を見せている。2025年4月以降の法改正を機に、さらなる市場拡大を見込んでいるという。

同社では2021年度から2023年度にかけて、計8件・338億円の不動産STを引受・販売したと説明。さらに、ケネディクスと連携し、2023年12月には神戸のホテルを対象に国内初のODX取扱い不動産STの公募を実施したと述べた。
ST社債の分野では、2024年3月に国内初となる全額電子マネー利払いST社債の公募を実施。投資家に新たな選択肢を提供している。デジタルアセットについて斉藤氏は「投資家に新たな機会を提供し、発行体の管理業務効率化にも貢献する」と指摘した。
⑭ケネディクス株式会社
デジタル・セキュリタイゼーション部の山田夕那氏は、不動産セキュリティトークン(ST)に関する同社の取り組みについて語った。同社はJ-REITや私募ファンドを通じてオフィスや賃貸住宅などの運用を手掛け、2024年12月末時点の受託資産残高(AUM)は国内最大規模の4兆6500億円を超えているが、その中で特に成長しているのが不動産STだという。

これまで資金負担量の大きい優良不動産への投資の世界は機関投資家が中心だったが、コンソーシアム型ブロックチェーンの活用により「個人投資家も少額で優良物件に直接投資できるようになった」と説明。現状のSTは不動産としての安定的な価格形成が期待され、源泉分離課税の適用で税制面でも魅力的と強調した。

不動産ST市場は2021年8月の国内初の不動産STO以来、2024年12月末時点で鑑定評価額ベース約3145億円、発行額ベースで累計約1352億円に成長。同社は44%のシェアを持っている。
今後は、超大型案件や外貨建ての海外不動産STの組成に向けた取り組みを進めると述べたほか、昨年12月には個人投資家向けポータルサイトを開設し、今後はモバイルアプリの提供を予定していることも明かした。
企業発表会のPart1、Part2はこちらから。
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|文・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|撮影:多田圭佑