FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長は、FRBは中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発の可能性を検討していると語った。
FRBのパウエル議長は11月19日付けの書簡で、共和党のフレンチ・ヒル(French Hill)下院議員と民主党のビル・フォスター(Bill Foster)下院議員からの9月下旬の質問に答える形で、FRBは、CBDCの可能性を模索する他国の試みに注目し、「アメリカでそうした取り組みを追求するコストと利益を注意深く分析」し続けると述べた。
デジタル通貨がドルに与えるリスクは?
ヒル議員とフォスター議員はパウエル議長に宛てた書簡の中で、他国あるいは民間企業が広く使われるデジタル通貨を発行した場合にドルに及ぼす潜在的なリスクへの懸念を表明し、FRBはそうした選択肢を検討しているかどうかを聞いた。
パウエル議長は、FRBはデジタルドルがアメリカに利益をもたらすかどうかを検討しているが、積極的に開発しているわけではない。さらにデジタル国家通貨は他国の場合とは違い、アメリカにメリットをもたらさない可能性があると述べた。
その例として、複数の国では「消費者の現金離れが急速に進行しているが、アメリカでは現金の需要が依然として強い」とパウエル議長は述べた。
同様に、議長によると、一部の国における決済システムは時間がかかり、信頼性が低いため、デジタル通貨は消費者にメリットを提供する可能性はある。だが一方でアメリカの決済システムは「革新的で競争力があり」、消費者は選択肢に欠くことはない。
デジタルドルの導入はまた、法、金融政策、金融安定、規制、運用に関する「重大な」問題を引き起こすとパウエル議長は述べた。例えば、「汎用的な」中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、法定通貨として分類されるのだろうか? またそうしたシステムの参加者の「権利と義務」は何だろうか?
デジタルドルはさらにプライバシーとセキュリティーに関する懸念も引き起こす。現金とは違い、もしFRBがCBDCを使ったすべての取引記録を保持しなければならないとしたら? さらに、デジタル通貨は利息を生むのかどうか、供給に制限を設けるのかどうかなども決めなくてはならなくなる。
最終的に、パウエル議長は以下のように結論づけた。
FRBは「既存のツールと比較して、金融政策の実施に与える汎用的なCBDCの潜在的かつ重要なメリットを特定できていない」。
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸
写真:CoinDesk archives
原文:Fed Reserve Evaluating Digital Dollar But Benefits Still Unclear, Says Chairman