トランプ氏の当選後のカオス、原因は──金急騰、ビットコイン一時上昇、株価下落

ビットコインはトランプ氏の大統領選勝利以降20超%上昇し、一時10万9000ドル超の史上最高値を更新した。ストラテジー（Strategy）の株価は30%超上昇と好調を維持している。
投資家が米国株へのエクスポージャーを減らすなか、欧州株のパフォーマンスは米国株を上回っている。また金の上昇は続き、1オンスあたり3030ドルを突破した。
米ドル指数（DXY）は大幅な下落の後に横ばいで推移しており、ユーロと英ポンドにとって好材料となっている。米国が自国のエネルギー優位性を重視しているため、原油価格は約7%下落している。

トランプ氏が4カ月前に米大統領選で勝利して以来、金融市場の混乱と世界的な不確実性（関税、地政学的な緊張、中東での紛争、ウクライナとロシアの紛争など）が続いている。

ビットコイン（BTC）は11月5日のトランプ氏の勝利以降、20%超上昇し、2025年1月末には史上最高値10万9000ドルを記録した。その後、ピークから30%下落したにもかかわらず、依然として最もパフォーマンスの高い資産の1つとなっている。ビットコインのパフォーマンスを反映すると見なされるストラテジー（Strategy、旧マイクロストラテジー）の株価は2024年11月の高値から約60%下落したにもかかわらず、トランプ政権下で30%超上昇し、回復している。

イーサリアム（ETH）は、暗号資産市場の広範な失望売りに連動して、約18%下落。Valkyrie Bitcoin Mining ETF（ヴァルキリー・ビットコイン・マイニングETF）も苦戦しており、30%近く下落している。だが、投資家は資金をビットコインに振り向け、ドミナンスは2%上昇して、61%を超えている。

欧州株は米国株を上回る好調なパフォーマンスを見せている。

ドイツのDAX（ドイツ株価指数）は20%上昇し、英国のFTSE100は6%上昇。一方で米国株式市場はナスダックとS&P500がともに約2%下落するなど、パフォーマンスは芳しくない。バンク・オブ・アメリカが最近発表したレポートでは、米国株式へのアロケーションが過去最大の減少を記録したことが強調されている。

不確実性が後押しする金は、史上最高値を更新し続け、3,030ドルを突破し、11%上昇した。

ドルの強さを主要通貨バスケットに対して測定する米ドル指数（DXY）は横ばい。しかし、トランプ政権下でドルは大幅に下落しており、リスク資産、ユーロや英ポンドなどの主要通貨に若干の安堵感をもたらしている。

米国債10年物の利回りは、政権が注視している重要な指標である4.2%までやや低下している。米国がエネルギーコスト削減のためにエネルギー優位性の維持という姿勢を崩さないなか、原油価格は約7%急落している。

注目すべきは、いわゆる「マグニフィセント・セブン（Magnificent 7）」の一部が苦戦していることだ。エヌビディア（NVIDIA）は16%減、テスラ（Tesla）は6%減となっている。

バイデン政権の遺産をデトックス？

ウォール街と暗号資産市場の最近の下落は「トランプ・プット」、つまりトランプ政権の政策によるサポートへの期待に火をつけた。しかし、政権は長期的な利益のために短期的な痛みを厭わないように思える。このアプローチは、バイデン政権時代の財政支出の行き過ぎを市場から一掃すると信じているからだ。

こうしたアプローチは、低インフレ、エネルギー安全保障の改善、米国債10年物の利回りの低下に現れてくると予想されている。

スコット・ベッセン財務長官が「デトックス期間」について語ったことは、政権のコントロールによる景気後退が待ち受けていることを示唆している。もしそうであれば、トランプ氏の戦略は明確だろう。

景気後退をバイデン政権のせいにし、関税と暗号資産のストーリーを利用してコストを管理し、金利引き下げを推進してテクノロジーとAIの成長を促進する。「短期的には痛みを伴うが、長期的には利益を得る。それが戦略だ」と、BitgetのCEO、グレイシー・チェン（Gracy Chen）氏はCoinDeskに語った。

「いずれにしても、ビットコインが7万ドルを下回ることはないだろう。おそらく7万3000～7万8000ドルまで下落し、購入を迷っている人にとっては絶好の機会となるだろう。今後1～2年で、ビットコインが20万ドルになることは、多くの人が考えるほど突飛なことではない」とチェン氏は続けた。