ECBチーフエコノミスト、ステーブルコインや米大手テック企業と対抗するにはデジタルユーロが必要と発言

- ECBチーフエコノミストのフィリップ・レーン(Philip Lane)氏は、ステーブルコインが金融システムで足場を固めつつあることに対抗するため、欧州にはデジタルユーロが必要だと述べた。
- 同氏は、Apple Pay、Google Pay、PayPalなど欧州以外の大手テック企業が提供する電子決済の普及と、それらがもたらすリスクについても語った。
- 同氏は、ユーロ圏は複数の国にまたがる地域であることから、ECBがCBDCを開発する必要性は他国よりも大きいだろうと述べた。
欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミスト、フィリップ・レーン氏は、ドル連動型ステーブルコインと米国の電子決済システムが欧州の金融システム内で足場を固めつつあることに対抗するために、欧州にはデジタルユーロが必要だと述べた。
Apple Pay、Google Pay、PayPalなど米大手テック企業が提供する電子決済の普及により、「欧州は経済的圧力と強制のリスクにさらされている」と、同氏は20日にアイルランドのコーク大学で行われた講演で述べた。
「デジタルユーロは、欧州の統治下で安全で世界的に受け入れられるデジタル決済手段を提供し、外国のプロバイダーへの依存を減らすだろう」と同氏は述べた。
「デジタルユーロが利用可能になれば、外国通貨のステーブルコインがユーロ圏の決済手段として定着する可能性も低くなるだろう」
同氏は、ステーブルコイン市場の99%が米ドル連動型ステーブルコインで占められていると指摘。ユーロ圏でドル連動型ステーブルコインが普及し、決済システムが「ユーロではなくドルに直接的または間接的に固定される」可能性があると述べた。
ECBは、世界中の先進国の中央銀行と同様に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入の可能性を模索している。その理由として、ドル連動型ステーブルコインや米企業が手掛ける決済サービスへの対抗がしばしば挙げられる。
同氏は、ユーロ圏が複数の国にまたがることを踏まえると、特にECBにとってCBDCの必要性は大きいかもしれないと述べた。単一通貨はEU加盟20カ国で使用されているが、ユーロ圏では国ごとに異なるレガシーシステムがあるため、統一された決済システムが欠如している。
「デジタルユーロは、ユーロ圏に広がるリテール向け決済システムの根強い断片化を克服する独自の機会を提供する」と同氏は述べた。
|翻訳:CoinDesk JAPAN編集部
|編集:橋本祐樹
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|原文:Digital Euro Needed to Counter Stablecoins, Non-European Big Tech, ECB Chief Economist Says