LINEは来年、2020年にもブロックチェーン・プラットフォームの提供を始める。11月21日、同社のカンファレンスで担当者が「BaaS(ブロックチェーン・アズ・ア・サービス)のようなもの」と述べた。開発者がクラウドでブロックチェーンを手軽に利用できるようになるこのサービスの最大の特徴は、KYC(本人確認)機能をデフォルトで備え、マネーロンダリング対策も可能なことだ。
ブロックチェーンを簡単に扱える“BaaS”
LINEブロックチェーン・プラットフォームは、サービス提供企業が、開発者向けコンソールからLINEのブロックチェーン機能を自身のサービスに簡単に適用できるもの。
LINEが11月20-21日に開いた開発者向けカンファレンス「LINE Developer Day」のブースで、担当者は「BaaSのようなもの」と述べ、「マイクロソフトなどが展開するBaaSと同様に、ブロックチェーンを簡単に扱える」と説明した。
BaaSとはブロックチェーンを利用したアプリなどを、インフラの設定をすることなく、手軽に構築することができるサービスのこと。マイクロソフトのAzure Blockchain ServicesやアマゾンのAmazon Managed Blockchainなどがその例だ。
LINEブロックチェーン・プラットフォームの特徴は規制対応
LINEブロックチェーン・プラットフォームの利用例としてLINEが挙げたのは、独自トークンの発行、権利証明・取引サービス、現物資産とデジタルトークンの連携、データ販売を行ったユーザーへのリワード(報酬)など。
プラットフォームの特徴は「規制対応」だ。KYC機能をデフォルトで備え、マネーロンダリング対策も提供される。
KYCは、金融サービスなどでは、投資家の保護やマネロン防止のために厳格に行う必要がある。
その一方で、KYCの作業が面倒だと途中で離脱される原因にもなる。サービス間で重複したKYCをすることはビジネス上のコスト要因でもあることから、フィンテック企業にとっては悩みの種とされてきた。
LINEのKYCの取り組みについては、この日のカンファレンスでLINE Pay KYCパスポートチーム・マネージャーのYoungchul Jung氏が「LINE Pay かんたん本人確認の仕組みとLINEの金融関連サービスとのシナジー効果」と題して講演した。
Jung氏は、LINEが取り組んできたKYCシステムについて触れ、KYC情報を安全に管理したうえで多様なサービスで共有するメリットについて説明。今後は、外部サービスがKYC情報を活用できるようにするという構想にも言及した。
10月のイベントで示されたLINEの独自チェーン構想
LINEは、今回のカンファレンスでブロックチェーンプラットフォームを公表する前から、独自開発のブロックチェーンLINK Chainを用いて、さまざまなユーザー体験を便利にする構想を明らかにしてきた。
LINEグループでブロックチェーン事業を展開するLVC代表取締役の高永受氏は、10月に開かれたブロックチェーンカンファレンスb.tokyo2019で、LINEブロックチェーン構想の全体図を説明している。
説明では、LINK Chainを仮想通貨取引所だけではなく、決済・送金などのフィンテック分野、ゲームやコマースなどのサービス分野、KYCや信用スコア、著作権などのビジネスソリューション分野など、あらゆる分野で活用する考えを示していた。
LINEは2018年、海外で仮想通貨販売所BITBOXを開設。2019年には国内で仮想通貨販売所BITMAXを開設し、米国市場への参入を準備していると明らかにしていた。高氏は著作権管理や個人情報管理にもブロックチェーンを活用するとも述べている。
LINK Chain、そして今回発表されたBaaSのLINEブロックチェーン・プラットフォームを中心に、LINEグループのブロックチェーン活用は今後も進むと見られる。
文・写真:小西雄志
編集:濱田 優