SEC、暗号資産業界との関係をリセット

米証券取引委員会(SEC)は、新委員長が議会で正式に承認される前から、暗号資産(仮想通貨)業界との関係を再構築しようとしている。3月21日、ワシントンD.C.にあるSEC本部で開催されたラウンドテーブルには、暗号資産業界のさまざまな意見や立場を代表する12人の弁護士が参加した。
概要
SECの暗号資産業界との関係再構築は、マーク・ウエダ(Mark Uyeda)委員長代行が暗号資産タスクフォースの立ち上げ、職員会計公報第121号(Staff Accounting Bulletin 121)の撤回、進行中の複数の訴訟の取り下げ、そして暗号資産およびプルーフ・オブ・ワーク(PoW)マイニングに対するSECの見解の発表などを行ったことに象徴される。
ポイント
SECは、現時点では暗号資産における最も重要な連邦規制当局であることは明白だ。姉妹機関の商品先物取引委員会(CFTC)が、この先、暗号資産の現物市場を監督することになる可能性はあるものの、現時点では、暗号資産関連企業がその行動指針を求めているのはSECだ。
詳細
ラウンドテーブルは2つのパートに分かれていた(3人の委員による挨拶を含めると3つ。
1つは、元SEC理事で、Paredes Strategiesの創業者であるトロイ・パレデス(Troy Paredes)氏が進行した90分のパネルディスカッションと、聴衆からの質問を取り上げた同じく90分の説明会だ。
議論の中心は、これまでと同様に暗号資産および暗号資産取引が具体的にいつ、どのようにして「証券」と見なされるかという問題だったが、さらにパネリストたちは、ランサムウェアが増加するなかでの暗号資産の役割から、企業の暗号資産の取り扱いまで、さまざまな問題に触れた。
BlupryntのCEOで、ジョージタウン大学法学部教授でもあるクリス・ブルーマー(Chris Brummer)氏は、ハウィーテスト(Howey Test:ある資産が証券に当たるかどうかを4つの要件で評価するもの)が実際に何を意味するかについての分析から議論を始めた。
「我々は基本的に、貯蓄がある場合には投資家保護の問題があると述べている。我々全員がよく知っている“共通事業”要件(4つの要件のうちの1つ)は、実際には一種の提供の問題を扱っている」
「これはまさに情報の非対称性に関するものであり、利益に関する問題は投資家心理、つまり、欲や恐怖といった意思決定を歪める可能性のあるものに関わってくる」
「そして基本的に、それらのすべての要因が揃うと、開示(規則)が義務付けられることになる」
SECのアプローチはこれまで、多くの暗号資産プロジェクトを制限してきたとDelphi Venturesの法務責任者のサラ・ブレナン(Sarah Brennan)氏は述べた。多くの暗号資産プロジェクトは、当初から幅広いトークン配布を意図しているが、「証券法が適用されるかもしれない」との懸念があるため、多くのプロジェクトは暗号資産的な側面よりも、上場を目指すかのような動きを取っている。
「トークンが商品というケースが増えている。価格を人為的に支えるさまざまな方法があり、それは総じて、市場にとって有害なものだと思う」
元SEC弁護士のジョン・リード・スターク(John Reed Stark)氏は「取引の経済的実態」がきわめて重要と述べた。
「どう見ても、暗号資産を購入しているのはコレクターではない。彼らは投資家であり、SECの使命は投資家を保護することだ」
SECの取り組みが今後どうなるかはまだわからない。だがSECは問題を公に議論し、積極的に関与する姿勢を強めており、業界もそれに応えているようだ。
ラウンドテーブルが開催されたSECのホールは、座席がほぼいっぱいになっており、加えてライブストリームにアクセスした人たちもいた。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:マーク・ウエダSEC委員長代行(CoinDesk)
|原文:The SEC Resets Its Crypto Relationship