金融・通信・ゲーム、業界のキーマンが集結!普及のカギを徹底討論:Web3&AI超会議

全国17大学のWeb3研究会からなる学生団体WeCreate3は3月29日、伝統的金融やエンターテインメント領域でのブロックチェーン活用やAIエージェントの可能性について考える「Web3&AI超会議」を開催した。同団体はWeb3関連のイベントやブロックチェーンの普及活動を行っており、今回のイベントにはメルカリ、KDDI、博報堂、LINE NEXTなどから有識者が登壇。パネルディスカッションやネットワーキングが行われたほか、学生主体の視点からWeb3やブロックチェーン分野でのキャリアについても議論された。
開会に先立ち、代表の矢野大雅氏は「Web3とAIの可能性に関心を持つ学生や社会人に学びの場を提供し、社会とつなげること」が本イベントの目的であると説明。学生が多く参加しているため、企業にとっても採用やインターンの機会につながると述べた。

Web3を意識させずシームレスな体験を
最初のセッション「Web3マスアダプションのすゝめ」では、KDDI事業創造本部Web3推進部グループリーダーの笠井道彦氏、メルカリProduct ManagerのYoshikazu Ando氏、博報堂ミライデザイン事業ユニットJVStudioビジネスデザインディレクターの森田英佑氏、博報堂キースリー代表取締役社長の重松俊範氏が登壇。モデレーターは、CoinPost取締役CSOの青木誠氏が務めた。
議論は「ユーザーにWeb3を意識させるべきか?それともシームレスに溶け込ませるべきか?」という問いから始まり、全員がWeb3を意識させるべきではないとの意見で一致した。
重松氏は、Web3はNFTやDAO(分散型自律組織)、バリデータなど多様な技術の集合体であり、その概念を強調しても一般ユーザーには伝わりづらいと指摘。技術ではなく、体験を通じて自然に価値を感じてもらうことが重要だと述べた。
森田氏も「Web3」という言葉自体が普及の障壁となり得ると指摘。Web1やWeb2もそうだが、後付けで示される概念であるため、それを強調することでユーザーに理解しづらいものになっていると指摘した。

Ando氏は、メルカリの暗号資産(仮想通貨)事業メルコインが普及した理由について「Web3やブロックチェーンを前面に出したからではない」と説明した。利用者がメルペイの残高を持っている場合、「どうせ使わないならビットコインに変えて価値の変動を体験してみたい」「イーサリアムを保有しているだけでリスクなくポイントがもらえるなら、そのまま置いておいた方がよい」といったシンプルな動機で利用していると指摘。ブロックチェーンが裏側で使われているかどうかは、ユーザーにとって本質的な関心事ではないと述べた。
また、「Web3を活用しませんか?ビットコインを買いませんか?」といったアプローチを取っていた場合、ここまでの広がりはなかっただろうと振り返った。
「データベースで良くない?」を超える必要性
成功するWeb3サービスの条件についても議論が交わされた。

森田氏は、ブロックチェーンを社会インフラの一部として活用する重要性を強調。博報堂が広告詐欺対策として暗号資産プロジェクト「ワールドコイン(Worldcoin)」の運営会社と提携した事例を紹介し、AIの発展による社会課題の解決にも取り組んでいると述べた。
Ando氏はブロックチェーンを普及させるうえで、「データベースで良くない?」という問いを超えられるかが鍵だと指摘。従来のデータベースで済むサービスとの違いを明確にする必要があると話し、Web3の意義を示すためには分散型ID(DID)やRWA(リアルワールドアセット)といったユースケースが重要になると述べた。
笠井氏は、「ユーザーの体験アップデート」がWeb3の普及に必要とした上で、不動産の小口所有やDeFi(分散型金融)など、既存の仕組みを改善する形での活用が現実的ではないかと述べた。また、現在広く普及しているポイントシステムをブロックチェーンに乗せトークン化できれば、「多くの国民が知らないうちに暗号資産を持つ世界が実現するかもしれない」と期待を寄せた。
金融やエンターテインメント分野での可能性
この日のセッションはさらに続き、野村ホールディングスやBinance Japan、SMBC日興証券、Ava Labsの代表者らが登壇し、伝統的金融とWeb3の融合について意見を交わした。

また、Web3やXR、AIを活用したエンタメ空間の創造など、ゲーム・エンターテインメント分野での活用事例なども紹介された。

|文・写真:橋本祐樹