「トークンビジネスの普及」「金融機能の効率化や高度化」──三井住友FGなどがステーブルコインの共同検討を公式に発表

三井住友フィナンシャルグループ(FG)と三井住友銀行、TIS、Ava Labs(アバラボ)、Fireblocks(ファイアブロックス)は4月2日、将来的なステーブルコインの事業化を視野に入れた利活用に関する共同検討について、基本合意書を3月21日に締結したと公式に発表した。この動きは昨日、日経新聞の報道をもとに伝えている。
リリースには、「共同検討においては、金融機関や事業者間で行われるホールセール領域での決済利用に耐えうるステーブルコインを発行・流通させるにあたり、満たすべき具体的な要件の定義について検討を行います」と記されている。
「ステーブルコインの特性を活かしたユースケースの探索・検討」も行うとしているが、まずはリテール(個人および中小企業)での利活用ではなく、ホールセール、つまりは大企業・中堅企業での企業間決済などでのユースケースを探るようだ。また「本共同検討は、実証実験としての活用に留まらず、継続的な業務への活用を視野に入れたユースケースの具体化を目指すものです」と強調している。
グローバルでみるとステーブルコインは現在、約2400億ドル(約36兆円、1ドル150円)に達している。昨年12月上旬に2000億ドルを超えたばかりだったが、わずか4カ月弱で400億ドル、20%増加している。
国内では、2023年6月の改正資金決済法の施行により、ステーブルコインの登場が期待されていたが、2025年3月26日に米サークルが発行する「USDC」の取り扱いが暗号資産(仮想通貨)取引所のSBI VCトレードでスタートした。ビットフライヤー、ビットバンク、バイナンスジャパンも取り扱いを予定している。国産ステーブルコインの登場も予想されている。
リリースから読める2つの意図
昨日の記事には「日本を代表するメガバンクの1つがステーブルコインの開発に乗り出したことのインパクトは大きい」と記した。今日のリリースは「本合意書の概要」「本合意書締結の背景」の2つの項目があり、それぞれ結びの一文が興味深い。
前者は以下のとおり。
「また、ステーブルコインについては、国債・社債等の伝統的金融資産や、不動産等に代表される現実世界の資産をトークンという形で表象するRWA(Real World Asset Asset)の決済手段としてのニーズもあることから、各社連携し、トークンビジネスの普及を国内外で後押ししてまいります」(太字は筆者、以下同)
後者は以下のとおり。
「SMBCグループと、国内外でデジタルアセットをテーマとして先進的な取り組みを進めるTIS、Ava LabsおよびFireblocksが連携して、将来的に新しい決済インフラとなり得るステーブルコインに関する共同検討を行うことは、国内における金融機能の効率化や高度化を後押しするためにも意義がある取り組みと考え、本合意書の締結に至りました」
前者からはステーブルコインを決済手段としつつ、米ブラックロックが手がけるトークン化米国債「BUIDL」と同じような金融商品、あるいはデジタル社債や日本が世界をリードする形で普及・拡大が進んでいる不動産セキュリティ・トークンにも今後、積極的に力を入れていくことが読み取れる。
後者からは、ステーブルコインのみならず、広くブロックチェーン技術を活用して、金融機関の効率化・高度化を実現しようとする意図が見られる。
Web3と伝統的金融の接近・融合がいよいよ日本でも本格化しそうだ。