トランプ関税により、予測市場で景気後退の可能性が急上昇
  • トランプ大統領が新たに導入した関税により、アメリカが景気後退に陥るのではないかという懸念が高まっている。
  • 分散型予測市場のポリマーケットとカルシは、景気後退の確率が50%を超えていることを示している。
  • 関税はインフレと世界的な貿易摩擦につながる可能性がある。
  • 一部の専門家は、経済への影響は景気後退というよりも景気減速であり、FRBが金利を引き下げる可能性もあると述べている。

ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の関税を受けて、アメリカの景気後退懸念が浮上している。分散型予測市場のポリマーケット(Polymarket)とカルシ(Kalshi)は、経済が打撃を受ける可能性が高まっていることを示している。

ポリマーケットでは、「2025年にアメリカが景気後退に陥るか」という契約が年初に取引開始されて以来、初めて50%を超えた。この契約の「イエス」のシェアは、24時間足らずで39セントから50セント以上に急騰した。

[「2025年にアメリカが景気後退に陥るか」:Polymarket]

2025年12月31日までに全米経済研究所(NBER)が景気後退を確認した場合、契約は「イエス」で決着する。もう一つの条件は、国内総生産(GDP)が2四半期連続で縮小することだ。

アメリカを拠点とする規制された予測市場であるカルシは、トレーダーの間で経済への懸念が高まっていることを指摘しており、2025年の景気後退の確率は40%から54%に上昇している。

金融市場は一般的に先行きを予測する傾向があり、アメリカの景気後退の可能性が高まっていることに反応して、ビットコイン(BTC)やその他の暗号資産(仮想通貨)などのリスク資産が下落する可能性がある。記事執筆時点では、S&P 500先物は3%安で取引されており、ウォール街では深刻なリスク回避傾向が示され、ビットコインには弱気のシグナルが送られた。ビットコインは24時間で1.5%安の8万3100ドルで取引された。

4月2日に発表された広範囲にわたる関税は、すべての輸入品に10%の基本税率を設定し、さらに最悪の貿易相手国として特定された約60カ国に対しては、より高い税率を課すこととなった。最も大きな影響を受ける中国に対しては、現行の20%に加えて34%の課税が課せられ、合計で54%となる。基本税率は4月5日に発効し、より高い相互税率は4月9日に発効する。

トランプ政権は、関税がアメリカの貿易赤字を是正するものと期待しているが、短期的には、国内のインフレと世界的な不安定化を招く可能性がある。中国や欧州連合(EU)などが報復関税で対抗し、本格的な世界貿易戦争が始まれば、後者の事態がすぐに起こり得る。

リスクオフは短命に終わるのか

それでも、関税の不透明性は本格的な景気後退ではなく、景気減速にしかつながらない可能性があると指摘する見方もある。

「関税のさらなるエスカレートの脅威は依然として主要な懸念事項ではあるが、当社の経済予測ではアメリカの景気後退は予測されていない」とUBSはブログ投稿で述べた。「当社の基本シナリオでは、幅広い選択的関税とそれに対する措置により、昨年に比べると経済成長は鈍化する可能性が高いが、アメリカ経済が今年、その歴史的な傾向である2%前後の成長を妨げられることはないだろう」。

金融市場に関しては、関税はハト派的であるという見方もある。つまり、当初のリスク回避の反応は一時的なもので、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待によってすぐに反転する可能性があるということだ。

「忘れないでほしい。関税はハト派的であり、高額の関税は非常にハト派的だ」と、調査ポータルサイトfedguy.comの運営者であるジョセフ・ワン(Joseph Wang)氏はX上で述べ、大規模な関税がさらなる利下げにつながることを詳述した11月の自身の投稿に言及した。

ワン氏は、関税はインフレを招くが、為替レートによって緩和され、最終的には一時的なものになると主張した。一方で、企業心理への打撃は長引く可能性があり、失業率の増加につながる可能性はある。FRBはそれを避けたいと考えている。

金利トレーダーはすでに、FRBが6月に基準金利を引下げ、昨年9月に始まったいわゆる緩和サイクルを再開する可能性が高いと見込んでいる。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:U.S. Recession Odds Surge in Prediction Markets on Tariff Shock. What Next for BTC?