トークン化されたファンドの急成長にはリスクも伴う: ムーディーズ

- ファンドのトークン化は急速な成長を遂げたが、この斬新な技術はいくつかの脆弱性をもたらすとムーディーズ・レーティングス(Moody’s Ratings)は報告書で述べている。
- ファンドマネジャーの経験が限られていることと、小規模チームへの依存がキーマンリスクをもたらし、ブロックチェーンの混乱、償還メカニズム、管轄域をまたがる法的課題が懸念に拍車をかけている、と同報告書は付け加えている。
トークン化されたファンドの人気が急上昇しているが、その急成長には投資家が見過ごしてはならない深刻なリスクが伴うと、信用機関のムーディーズ・レーティングスは4月9日に発表した報告書で述べた。
ブラックロック(BlackRock)やフランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)など、いくつかの大手金融機関がトークン化の世界で頭角を現し、他の金融機関も最新のトレンドに追随するようになった。
例えば、トークン化されたマネーマーケットファンドは、rwa.xyzのデータによると、1年間でおよそ350%成長し、時価総額は52億ドル(約7540億円、1ドル=145円換算)に達した。
「トークン化されたファンドを評価する際、投資家はアクセシビリティと透明性というメリットだけでなく、基盤となるテクノロジー、セキュリティの脆弱性、スケーラビリティの限界、進化する規制などに関連するリスクも天秤にかける必要がある」と、ムーディーズ・レーティングスのシニア・アナリストであるクリスティアーノ・ヴェントリチェリ(Cristiano Ventricelli)副社長は述べている。
こうしたリスクの最前線にあるのは、まだ発展途上のトークン化市場における多くのファンドマネージャーの経験が限られていることである、とムーディーズは指摘している。
小規模なチームと実績の少なさにより、運用会社は少数の個人に多くを依存するキーマンリスクに直面する可能性がある。重要な幹部が抜けたり、ガバナンス体制が手薄になったりすると、ファンドの安定性が揺らぐ可能性があると、報告書は指摘する。ムーディーズはファンドチームに対し、責任を分散し、リスク管理体制を強化するよう促した。
ブロックチェーンの混乱も、やはりこの技術の新規性から生じるもので、もうひとつのリスクとなる。スマートコントラクトはファンドの運用を自動化するなど運用効率を高める一方で、コーディングの欠陥や悪意のある攻撃の影響を受けやすいと報告書は指摘する。
パブリック・パーミッションドブロックチェーンを使用することで、アクセスしやすくなる反面、潜在的な悪用にさらされる可能性も高まると、報告書は付け加えている。
ムーディーズは、混乱に備えるため、オフチェーンのバックアップを維持し、スマートコントラクトの厳格な監査を実施することを推奨している。
投資家が保有資産を現金化できる償還メカニズムもまた、脆弱性をもたらす。報告書は、トークン化されたファンドを、ステーブルコインと法定通貨の両方で償還できるようににすることを奨励している。この二重のアプローチは、ステーブルコインのデペッグやブロックチェーンの停止といった出来事に対する緩衝材となる。
最後に、トークン化されたファンドは様々な規制を持つ管轄区域をまたいで運営されており、これは投資家の請求が法的なハードルに直面するリスクを高めると報告書は述べている。
トークン保有者が原資産を直接請求できるように設計された構造を採用しているファンドもあるが、その請求が強制力を持つかは依然として、現地の法律とファンドの書類の強度に左右される、と報告書は指摘している。
|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:Tokenized Funds’ Rapid Growth Comes With Red Flags: Moody’s