BNB、もっと注目されてよい理由

多くの投資家はBNB(ビルドアンドビルド)を「バイナンスコイン」と認識しているが、それでは大きな可能性を見過ごしているとOsprey Funds(オスプレイ・ファンド)のバイスプレジデント、マット・ジェリックス(Matt Gerics)氏は指摘する。

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多くの投資家はBNB(ビルドアンドビルド)を単に「バイナンスコイン」と認識しているが、この呼称はBNBの幅広い価値を見落としている。BNBは当初、Binance Chain(バイナンスチェーン、現在はBNB Smart Chain)のネイティブトークンとしてローンチされ、バイナンスの四半期利益に連動していた。だが今では、複数のユースケースと経済的価値を持つ分散型資産へと進化している。

BNBは、世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所Binance(バイナンス)の拡大とともに価値上昇が見込まれる一方で、トークンの供給モデルとBNB Chainの発展という2つの独立した価値ソースを備えている。第1に、BNBは四半期ごとの固定比率でのバーンメカニズムを通して、価値の保存手段として機能している。第2に、BNB Smart Chainを通じてスマートコントラクト機能を提供し、DeFi(分散型金融)やゲームアプリケーションのハブとして成長している。

デフレ型の価値保存機能

BNBのバーンメカニズムは、他の多くの暗号資産とは一線を画している。ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)と比較してみよう。

  • BTC:インフレ型、だが供給量には上限がある。
  • ETH:ネットワークの利用状況に応じた予測不可能なバーン率により、インフレ型にもデフレ型にもなる。
  • SOL:インフレ型。8%から始まり、時間とともに低下する。

BNBのバーンプロセスは独特だ。生成されたブロック数と四半期ごとの平均価格に基づいてトークンが流通から排除され、ガス代(取引手数料)も一定に保たれる。これまでに約6000万BNB(現在の価格で約350億ドル相当、約4兆9900億円、1ドル143円換算)がバーンされ、流通供給量は1億4200万に減少した。直近の四半期のバーンだけで、10億ドル相当のBNBがバーンされており、これは年率換算4.6%のデフレ率に相当する。

ビットコインは現在、先行者利益、時価総額、そして堅牢で分散化されたマイナーネットワークを背景に、価値の保存手段として最も注目を集めている。ビットコインブロックチェーンのコード変更(例えば、供給上限の変更)にはネットワークの過半数の同意が必要になるが、現状では事実上、不可能だ。

BNBのバーンは、当初のホワイトペーパーから変更されているため、今後も変更される可能性があり注意が必要だ。積極的なトークンバーン戦略に伴うトレードオフと言える。

〈出典::bnbburn.info〉

BNB Chain:モジュール型のレイヤー1エコシステム

BNBの次なる進化は「BNB One Chain Initiative」(BNBワンチェーンイニシアチブ)。これは、Web3での相互運用性を実現するためのマルチチェーンエコシステムの統合を目指すものだ。

  • BNB Smart Chain(BSC):高速、低コスト、EVM互換のDeFiハブ。
  • BNB Greenfield(BNBグリーンフィールド):リアルタイムで収益化可能なデータのための分散型ストレージネットワーク。
  • opBNB:オンチェーンゲームや高負荷なdApp(分散型アプリケーション)向けの超低コスト(1トランザクションあたり0.0001ドル以下)の高スループットのロールアップ。

イーサリアムブロックチェーンが直面している複数の課題(レイヤー2の断片化とインフレ懸念)に対して、BNB One Chain Initiativeは開発者とWeb3アプリケーションに有力な代替手段を提供している。

現状、BNBは必ずしも順風満帆というわけではない。投資家は、BNBの分散化の取り組みが単なるマーケティング戦略に過ぎないリスクやBinanceのKYC(顧客確認)方針をめぐる規制当局との争いが続いていることを考慮すべきだ。

リチャード・テン(Richard Teng)氏がBinanceを率いるようになった今、BinanceとBNBの今後の展開は、コンプライアンスの強化、規制当局や他の取引所との連携を通じたBNBのアクセス拡大に重点が置かれる可能性が高い。

BNBは、米国の取引所ではほとんど取引されていないものの、時価総額は約1000億ドル(約14兆2000億円)にのぼる。今後、米国の暗号資産規制が緩和されれば、BNBの米国市場への再参入は、さらなる成長を後押しする重要な起爆剤となり得る。

ディスクロージャー:オスプレイ・ファンドは、BNBへのエクスポージャーを提供する「Osprey BNB Chain Trust(OBNB)」を運用している。マット氏はBNB、OBNBを保有していない。

|翻訳:CoinDesk JAPAN編集部
|編集:橋本祐樹
|画像:Shutterstock
|原文:Why There’s More to BNB Than Meets the Eye