「さて、メディアです」フジHD取締役候補と報じられたSBI北尾氏が語ったこと

傘下の企業がステーブルコイン「USDC」を日本で初めて取り扱うなど、暗号資産/Web3領域で近年、存在感を強めているSBIホールディングス。代表取締役会長兼社長の北尾吉孝氏が3月初めの「FIN/SUM」で行った40分の講演については、すでにお伝えしている。

▶関連記事:ドル基軸体制強化を狙う米国の動きを捉え、拡大・対抗──SBI北尾氏の刺激的な40分【FIN/SUM 2025】

その北尾氏が、渦中にあるフジテレビの親会社フジ・メディア・ホールディングスの取締役候補として株主提案されると報じられ、以前の経緯(ライブドアのニッポン放送買収を阻止したこと)を含め、注目を集めている。

北尾氏は「FIN/SUM」の講演のラストで、メディアへの取り組みを語っていた。ここでは、その部分を抜き出し、再掲する。

◇◇◇

IT・金融・メディアを融合し、米国の動きに対抗

40分の講演もラスト5分あまりになった頃、北尾氏は「さて、メディアです」と切り出し、おそらく満席の会場のほぼ誰もが予想していなかったメディアへの取り組みを語り始めた。

「SNS等のインターネットメディアをフル活用し、メディア・IT・金融を融合した生態系をこれから作っていく」

「もう全世代でインターネットがテレビを凌駕している。2020年を境にマスコミ4媒体の広告費をインターネット広告が上回っている。地上波テレビCMも、代理店を使うのではなく、インターネット広告と同様に発注からモニタリングまでオンラインで完結する仕組みが動いている」

「海外メディアに日本のメディアははるかに遅れを取っている。アメリカは急速にメディア、IT、金融の融合が進んでいる。デジタル金融のノウハウ・技術、AIの技術、それがメディア側の潮流と金融側の潮流をドッキングさせた」

「トランプ氏は、早いときからトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(Trump Media and Technology Group)を作ってソーシャルメディア・プラットフォームのトゥルース・ソーシャル(Truth Social)を作った。そして基軸通貨としてのドルを強化する、DeFi(分散型金融)の大衆化と分散型ガバナンスを実現するといってワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial:WLFI)を作った」

「イーロン・マスク氏は、ツイッターを買収してXに変え、トランプ氏に協力して、DOGE(政府効率化省)のステータスを得て、そして今度はVISAと提携して、デジタル決済プラットフォームのxMoneyを作る。グズグズしていたら、Xを通じて日本の金融にどんどん入ってくる。我々も早急にイーロンに対抗できるような状況を作り上げないといけない。今どんどん動いている」

「グループレベルでの情報発信力を強化、SNSの専門チームの立ち上げ、および他社とのアライアンスの検討をどんどん進めている。金融IT領域で強みを持つSBIグループの生態系にメディアの領域を融合させる」

「地方創生にも、地方の新聞社、放送局に我々の金融コンテンツを送るとか、地方メディアをデジタライズしていくなど、いろいろなことができる。我々は現に、地域金融機関をデジタルの力で変えてきた」

「さらに、オープンアライアンス戦略のメディアプラットフォームを構築して、インフルエンサーを束ねて、1つのメディアにしていこうと思っている」

◇◇◇

「FIN/SUM」での講演では、SNSの活用、地方紙・ローカル局とのシナジーをあげていた。株主提案が採択され、仮に北尾氏がフジHDの取締役会に加わることになれば、SBIグループのメディア戦略はさらに強力に進むことになりそうだ。

|文・撮影:増田隆幸