ビットコインのラリー、短命に──パウエルFRB議長がスタグフレーション懸念を提起
  • パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、トランプ大統領の関税政策の影響について厳しい懸念を示した。
  • パウエル議長の発言を受け、ビットコイン(BTC)と株価は急落した。
  • 「非常にタカ派的だ」とあるアナリストは語り、市場や経済状況に劇的な変化がない限り、5月の利下げは見送られるだろうと付け加えた。

パウエルFRB議長がトランプ関税の影響について警告を発したため、8万6000ドル台に挑戦する可能性があったビットコインの小幅な上昇は米国時間4月16日午後、すばやく反転した。

「これまでに発表された関税引き上げの水準は、予想よりもかなり大きい」とパウエル氏は講演で述べ、次のように続けた。

「インフレ率の上昇や成長率の鈍化など、経済への影響も同様だろう」。

言い換えればスタグフレーションであり、米国が2桁台のインフレ率とともに経済活動の低迷を経験した1970年代の大半に逆戻りすることを意味する。

パウエル氏は、「我々は、デュアル・マンデート(物価の安定と雇用の最大化というFRBに課せられた2つの使命)が緊張関係にあるという困難なシナリオに陥るかもしれない」と続けた。

ビットコインの価格は、パウエル氏の発言から数分間で約2.5%下落し、現在は過去24時間で1.5%安の8万3700ドルとなっている。

下落での始まりから巻き返しを図っていた米国株も打撃を受け、ナスダックは3.4%下落し、セッション最安値を記録した。

パウエル氏はまた、暗号資産(仮想通貨)が主流になるにつれ、ステーブルコインのための法的枠組みが必要であると述べた。暗号資産をめぐる銀行規制は 「部分的に緩和される 」可能性が高いと、パウエル氏は述べた。

米上院銀行委員会は3月、ステーブルコイン発行企業を規制する法案を可決した。これは委員会としては初の承認となり、米国での法制化に大きく近づいた。

タカ派のFRBが暗号資産とBTCの重荷に

 「パウエル氏は極めてタカ派的な発言をした」とヘッジファンド、レッカー・キャピタル(Lekker Capital)の最高投資責任者(CIO)であるクイン・トンプソン(Quinn Thompson)氏は述べた。

パウエル議長が先週の市場の混乱を「秩序ある市場の機能」だと軽視したことは注目に値すると、トンプソン氏は付け加えた。

「少なくとも、国債市場のボラティリティの上昇に言及すると見込んでいたが、それはなかった」と、トンプソン氏は指摘した。

トンプソン氏によれば、パウエル氏のトーンは、投資家が今後の会合での利下げ期待を抑えるべきことを示唆しており、それは暗号資産を含むリスク資産に重くのしかかる可能性がある。

「5月の利下げは、FRBがよほどの理由で介入しない限り見送られるようだ。6月も確実とは言えない」と、トンプソン氏は語り、次のように締めくくった。

「暗号資産とビットコインの強気材料は流動性と政策当局の介入だ。その両方が非常に遠くにあるように思えるため、短期的に建設的な未来像を描くのは難しい」 。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:パウエルFRB議長(Domenico Fornas / Shutterstock.com)
|原文:Bitcoin Rally Short-Circuited as Fed Chair Powell Raises Stagflation Fear