トランプ氏によるFRB議長解任からビットコインは恩恵を受けるか?──トルコのリラ危機が示唆するもの
  • ドナルド・トランプ米大統領がジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任することを計画していると報じられたことで、米ドルは壊滅的な打撃を受け、ビットコインの普及が加速する可能性がある。
  • トルコのエルドアン大統領が中央銀行に干渉したことは、通貨崩壊とビットコインやステーブルコインへの投資の増加を招いたことから、警告の役割を果たす。

今週は興味深い幕開けとなった。ドル相場が3年ぶりの安値まで暴落し、米株価の下落も加わったにもかかわらず、いつもはウォール街のセンチメントに追随するビットコイン(BTC)は堂々と値上がりしている。

これは始まりに過ぎないかもしれない。

ドナルド・トランプ大統領がパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任を計画していると報じられたことを受けて、ドルインデックス(DXY)と米国株式市場は4月21日、下落した。

トランプ氏が計画を実行に移した場合、米ドル離れとビットコインやステーブルコインのような差し押さえや検閲に強い資産へのシフトが加速する可能性がある。

これが、トルコから学べる教訓である。トルコではエルドアン大統領が中央銀行の運営に何度も干渉したことが主な原因で、通貨リラ(TRY)が長年にわたって暴落してきた。リラの下落は、少なくとも2020年から21年にかけて、ビットコインやステーブルコインへの資本逃避を引き起こした。

トランプ氏とFRBとの確執

トランプ氏は何年もの間、FRBとその議長であるジェローム・パウエル氏と公に確執があり、金利が現在よりはるかに低かった第1期中でさえ、利下げが遅すぎるとしてパウエル氏を批判してきた。

しかし、トランプ氏の批判は最近になって熱を帯びてきており、トランプ氏がインフレはないと示唆しながら利下げを再三要求しているにもかかわらず、パウエル氏は先日、スタグフレーションを警告。このような中、トランプ氏がパウエル氏を排除する方法を模索しているとの報道もある。

パウエル氏の忍耐強いアプローチは、貿易戦争に端を発した世論調査でのインフレ見込みの急上昇を受けたもので、このような調査の結果は常に、自己実現的なものになりかねない。

それでも4月21日、トランプ氏はさらに踏み込んで、パウエル氏を「大負け組」と呼び、金利を即座に引き下げない限り経済は減速すると警告した。

トルコからの教訓

エルドアン氏は2019年に中央銀行の業務に介入し始め、それ以来リラは1ドル5.3リラから1ドル38リラまで7分の1に暴落した。

すべては2017年にトルコのインフレ率が2桁に達したことから始まった。翌年も高水準で推移したため、同国中央銀行は2018年9月、1週間物レポ金利を17.5%から24%に引き上げた。

この動きが気に入らなかったエルドアン氏は2019年7月、トルコ中央銀行(CBT)のチェティンカヤ総裁を解任する最初の法令を出した。

それ以降2021年末まで、エルドアン氏は何度もCBT当局者の解任と雇用を決定する法令を出した。こうした中、インフレ率は高止まりし、リラは憂慮すべき速度で下落し続けた。

「我々はもちろん、高金利を信じていない。我々は低金利政策でインフレと為替レートを引き下げる……高金利は金持ちをより金持ちにし、貧乏人はより貧乏にする。そんなことはさせない」とエルドアン氏は2021年に語った。

データソースTradingEconomicsによると、2025年の時点でトルコは40%近いインフレ率に直面している。

このエピソードは、中央銀行の独立性に手を加えることは、特にインフレが迫っている場合、投資家の信頼を損ない、国内通貨を暴落させる可能性があることを浮き彫りにしており、トランプ氏への教訓となる。

必ずしも米ドルがリラのように暴落するとは限らないが、大幅な切り下げが起こる可能性はある。

ドルが世界的な基軸通貨であり、米国債市場が国際金融の基盤であることを考えれば、世界市場にとってはさらに不安定さをもたらすものになるかもしれない。

もし良識が勝てなければ、トルコ国民がそうであったように、米国の投資家も米国資産からビットコインや他の代替投資へ移行したいと感じるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:Can Bitcoin Benefit From Trump Firing Powell? Turkey’s Lira Crisis May Provide Clues