暗号資産の分類、発行体の線引きはどうする:自民党ブロックチェーン推進議員連盟

ブロックチェーン推進議員連盟の第29回会合が4月17日、「政府における政策進捗報告」を議題に開催され、金融庁、経済産業省、デジタル庁がそれぞれの取り組みを報告、有識者・事業者として参加した日本ブロックチェーン協会(JBA)がコメントや意見を述べた。
会合は同議員連盟会長の木原誠二衆議院議員が「この数カ月、さまざまな実証事例を学ばせていただいた。今日は昨年の提言を踏まえた進捗を確認し、新たな提言につなげていきたい」と挨拶してスタート。司会・進行は神田潤一衆議院議員が務めた。
金融庁、経済産業省、デジタル庁が取り組みを報告
金融庁は、4月10日に公表した「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」ディスカッション・ペーパーおよびJapan Fintech Week 2025での取り組みについて報告。経済産業省は、CoinDesk JAPANを運営するN.Avenueがワークショップ企画運営および広報業務を担当した「Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」やWeb3技術の活用が期待されるJ-クレジット制度について、デジタル庁は地方自治体におけるDAOの取り組みやVC(Verifiable Credential)のガバナンスに関する検討などを報告した。
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後半の意見交換では、J‐クレジットの可能性、経産省の実証事業で行われた各取り組みの今後の展開、VC活用におけるグローバル連携の必要性などが議論されたが、最も活発にやり取りされたのは、ディスカッション・ペーパーについてだ。

暗号資産を類型①と②に分けて検討
ディスカッション・ペーパーの内容は、以下の記事で伝えたとおり。
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ディスカッション・ペーパーは「利用者保護とイノベーションの促進のバランスの取れた環境整備が重要」として取り組むべき課題を指摘しつつ、暗号資産を2つに分けて検討することを提案している。類型①「資金調達・事業活動型」と類型②「非資金調達・非事業活動型」だ。
類型①は「資金調達の手段として発行され、その調達資金がプロジェクト・イベント・コミュニティ活動等に利用されるもの」とされており、わかりやすく言えば、IEOで発行される暗号資産だ。一方、類型②は「類型①に該当しないもの(例:ビットコインやイーサのほか、いわゆるミームコイン等を含む。)」と記されている。
さらに投資家保護のために「情報開示・提供規制の強化」があげられているが、類型②について、会合での金融庁の説明資料には「特定の発行者を観念できない暗号資産が多いため、当該暗号資産を取り扱う交換業者に対し、情報の提供を求めることが考えられるのではないか」と書かれていた。
2025年2月、金融庁は非公開の勉強会で暗号資産の現行の規制体制を検証していると報じられて以来、「暗号資産を何らかの形で分類して、規制するのではないか」「それにより、日本でも暗号資産現物ETFが実現するのではないか」と言われてきた。
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ディスカッション・ペーパーは文字どおり、ひとつの指針を示し、議論のために広く意見を求めている。
暗号資産の分類、発行体の定義が議論に
暗号資産の分類は、考え方としては明確だが、実際にどの暗号資産を、どう分類するかは非常に難しい問題になるだろう。
会合に出席した日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事で、bitFlyer Holdings 代表取締役 CEOの加納裕三氏は「発行体のあるトークンと、ないトークンの線引きをどうすべきかという大きな課題が残されている」と述べ、「事実上発行している」運営体による「潜脱行為」がないような規制が健全なマーケットのためには不可欠と強調した。

また加納氏は、規制の金融商品取引方(金商法)への移行およびETF実現には賛同しつつも、ETFが先行して実現すれば「交換業者として業界を支えてきた会社が非常に厳しい立場になる」と述べ、同タイミングでの実現を訴えた。
金商法への移行は、仮に2025年末の税制大綱に盛り込まれ、2026年の国会で成立しても、1年程度の準備機関を経て、施行は2027年からとなる。つまり、暗号資産の分離課税の実現は、最短でも2027年。
一方、例えば、ビットコインETFが何らかの手段で2026年、つまり金商法への移行(分離課税)よりも1年早く実現すれば、多くのユーザーは最大55%の税金がかかるビットコイン「現物」ではなく、金融商品として20%の分離課税となるビットコイン「ETF」を選ぶことは容易に想像できる。
しかも、ETFの販売は証券会社が行うため、暗号資産交換業者は大きな影響を受けることになる(ただし、暗号資産交換業者と証券会社を持つ企業グループにとってはチャンスとなる。その意味で、交換業者のスタンスは必ずしも一枚岩とは言えないだろう)。
さらに加納氏は、ETFの実現には、現在2倍に制限されているレバレッジ倍率の改正も重要になると述べた。日本でビットコインETFが組成され、人気となれば、多くのビットコイン現物が必要になる。現在、国内の流動性は枯渇しており、流動性を高める手段としては、レバレッジ倍率を上げることが有効というわけだ。
会合終了後には、金融庁の出席者と加納氏が立ち話を続ける場面も見られた。次回の会合は5月12日に開催予定。昨年に続く、ブロックチェーン推進議員連盟の新たな提言の具体化に向けた議論が行われる予定だ。
|文・撮影:増田隆幸