ビットコイン急落を受け流していい3つの理由──冷静にガチホ?

パニックになるな。

これがCoinDeskがインタビューした数人の強気な専門家から、ビットコイン価格の容赦ない急落に動揺する人へのメッセージだ。

ビットコイン価格は先週あたりから、おそらくポジティブな変化を促す材料の登場不足と、中国の仮想通貨取引に対する最近の取り締まりを理由として11.5%下落した。心理的なハードルである7000ドルを短時間下回り、記事執筆時点では7117ドル付近で取り引きされている。

しかし視野を少し広げ、マクロな視点に立つと、ビットコインにとって今回はただの一時的な下落だろうと考えるための、もっともらしい理由が少なくとも3つある。

需要サイドで言えば、バックト(Bakkt)やフィデリティ・デジタル・アセット・サービス(Fidelity Digital Asset Services:FDAS)のような機関投資家向けプラットフォームでは需要が高まり始めている。

個人投資家によるビットコイン購入も、同様に人気の消費者向けアプリ「スクエア(Square)」で増加している。それ以外の条件が同じなら、2020年に見込まれているマイニング報酬の半減期は、市場に定期的に投入される新しいビットコインの量を減らすため、需要サイドにとっては良い前兆となる。

「最近の価格低下は短期的な懸念材料だが、ビットコインをめぐるファンダメンタルズと機関投資家への広がりは右肩上がりを続けている」と、香港に拠点を置くベンチャーキャピタル兼トレーディング企業、ケネティック(Kenetic)の共同創業者兼マネージング・パートナー、ジェハン・チュー(Jehan Chu)氏は述べた。

その1. バックトの立ち直り

9月にがっかりするようなスタートを切った後、バックトの先物市場は本格的に上昇を始め、11月22日(現地時間)には、2728件の契約が取引され、これまでで最高の取引高となった。これは前日比68%増で、建玉は前日比29%増となった。建玉とは、未決済の契約の総数を意味する。

ニューヨーク証券取引所も保有するインターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange:ICE)の子会社であるバックトは、機関投資家と企業を対象とした、仮想通貨の購入、売却、保管のための認可済みのプラットフォーム兼取引所だ。

その役割は、リスクヘッジに活用できる先物取引のような、より洗練された商品を提供することで、大規模な機関投資家などの間に仮想通貨分野に対する信用と信頼を高めることにある。

「ビットコインが次の最高値を記録することに、より時間がかかることは実際には良いことだ。なぜならそれはいかに市場が成熟し、より多くの機関投資家が参入しているかを表すから」と、ビットコイン市場と仮想通貨に特化したトレーディングのための教育プラットフォーム、ブロックルーツ(Blockroots)の共同創業者兼アナリストのジョシュ・レイジャー(Josh Rager)氏は述べた。

その2. 積極的なフィデリティ

同様に、2019年前半に投資信託大手のフィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)がローンチしたフィデリティ・デジタル・アセット・サービス(FDAS)などの大口投資家をターゲットとしたプラットフォームも、仮想通貨の保管を取引所に頼ることなく、仮想通貨に安全に手を伸ばす方法を探している大規模なファンド向けに不可欠なサービスを提供している。こうしたプラットフォームは、仮想通貨向けのカストディの選択肢を提供することで、おそらく長期的な市場心理を押し上げていると専門家はCoinDeskに語った。

機関投資家向けの新しい仮想通貨トレーディング企業、フィデリティ・デジタル・アセッツ(Fidelity Digital Assets)も、大規模投資家にとって仮想通貨を扱い始めるプロセスをより便利で本格的なものにする専門の顧客サポートを備えた導入サービスを特徴としている。

機関投資家への広がりは「急速なペース」で続いていると資産運用企業ヴァンエック(VanEck)のデジタル資産戦略担当ディレクター、ガボール・グバックス(Gabor Gubacs)氏は語った。

「ビットコインの価格が下がっていることは、新しくビットコインを購入する人にとっては、より購入しやすく、より健全なスタートとなる」とグバックス氏は述べた。

確かに、一部の人が望んだほどには購入しやすくはないかもしれない。例えば、ヴァンエックは9月、SEC(米証券取引委員会)へのビットコイン上場投資信託(ETF)の申請を取り下げた。SECが、個人投資家向けのそうした商品の承認をまったく急いでいないと示唆した後のことだ。

代わりにヴァンエックは、機関投資家のみに、ETFに似たビットコイン・ファンドの株式を販売している。

その3. スクエアの躍進

強気筋にとってもう1つの楽観材料は、スクエアのキャッシュ(Cash)アプリを使ってビットコインを初めて購入した人の数がおよそ2倍に増え、同社のビットコイン収入は2019年第3四半期に前年同期比244%増の12億7000万ドル(約1380億円)となった。

確かにスクエアは2017年11月(前回の強気市場のピークに近い時期)にビットコイン購入サービスを提供し始めたばかりで、3桁の成長も元となる数字は小さかった。また、同社がビットコイン販売によって得た利益は、7桁(数百万ドル)台前半と比較的小さい。

それでもケネティックのチュー氏にとっては、機関投資家サイドでの展開と組み合わせると、データは楽観的な見解を支えている

「バックトの取引高は着実に増加しており、スクエアでの個人投資家の購入も高水準、そしてフィデリティのようなプラットフォームは顧客にビットコインへの総合的なアクセスを生み出し続けている──これらはすべて、ビットコインにとって強気な長期的サインだ」とチュー氏は語った。

だが「ファンダメンタルズは違う」

そして、ビットコインそのものについて重要な指標がある。

ブロックルーツのレイジャー氏は、ビットコインネットワークにどれだけの計算能力が注がれているかを示すハッシュレートは、2017年12月に史上最高値の2万ドルを記録した時から3倍になっていると指摘した。

同氏の解釈によると、機関投資家は弱気な投資家に投げ売りを強いるために売りに出ており、大規模ファンドは2020年5月に予定されている半減期に先立って、より低価格でビットコインを積み上げることができる

仮想通貨デイトレーダーでアナリストのジョニー・モー(Jonny Moe)氏は、半減期は強気な長期的論拠につながる最大の単独要素であり、ビットコイン自体はその購買能力が時間とともに増加するデフレ通貨であることに同意した。

「現状で我々が持つすべてのエビデンスは、価格は供給のこのディスインフレ(インフレから脱したが、デフレになっていない状態)を尊重していること」とモー氏は述べた。

「この(半減期の)4年サイクルに従わなくなるまでは、この状態が続くということが最も単純な長期的見解だ」

しかし、この点には議論の余地があることを覚えていて欲しい。一部のトレーダーは、歴史が繰り返すかどうか疑問に思っている。かつて、半減期を見込んでビットコインを購入した人は、すでに上昇中の市場という形で追い風を受けていたと仮想通貨トレーダーのウィリー・ウー(Willy Woo)氏は指摘した。

「今回は1万4000ドルから7500ドルとなり、投げ売りをして自滅する弱いマイナーを全滅させている」とウー氏はツイートした。

「これがすでに弱気な行為に加わるのだから、6カ月間もハッピーな相場は続かない。過去と同じことが繰り返されると考えることはできない。ファンダメンタルズは違う」

※記事執筆時、筆者は仮想通貨を保有していない。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Image via Shutterstock
原文:Keep Calm and HODL On? 3 Reasons to Look Past Bitcoin’s Price Rout