インド政府は、ブロックチェーンユースケースのより幅広い展開を支援するための国家的フレームワークの準備を行なっている。
インド電子情報技術省(Minister of state for electronics and IT:MeitY)のサンジェイ・ドートレ(Sanjay Dhotre)大臣は2019年11月27日(現地時間)、分散型台帳技術の可能性と、異なるユースケースのための共有インフラの必要性を論じた国家レベルブロックチェーンフレームワーク(National Level Blockchain Framework)についてのアプローチをまとめた報告書を政府が起草していると述べた。
ドートレ大臣は、インド下院ローク・サバーの議員からのブロックチェーンに関する質問に答える書簡の中でこの発表を行った。
具体的には、パルベシュ・サヒブ・シン・ベルマ(Parvesh Sahib Singh Verma)下院議員が、政府がブロックチェーン技術とその利用の可能性についての研究を奨励し、実行したのか、もし行なったとしたらその研究の結果はどのようなものであったかを尋ねた。
回答として同大臣は、「MeitYは、ブロックチェーン技術をガバナンス、バンキング、金融、サイバーセキュリティなどの異なる分野で応用の可能性を持つ重要な研究エリアの1つと認識している」と述べた。
書簡によればインド政府はすでに、ブロックチェーン技術とそのユースケースの研究を考案・実行するプロジェクト、ブロックチェーン技術分散型拠点(Distributed Centre of Excellence in Blockchain Technology)を築いている。
このプロジェクトは、高度演算開発センター(Centre for Development of Advanced Computing)やバンキング技術開発・研究機関(Institute for Development and Research in Banking Technology)を含む政府・研究機関によって行われている。
この取り組みでは、参加機関がテランガーナ州シャムシャバード地区における不動産登記のためのブロックチェーンシステムを試験し、クラウド・セキュリティ・アシュアランス(Cloud Security Assurance)、C-KYC(投資家向けの顧客確認システム)、貿易金融向けの概念実証ソリューションを開発した。
その他進行中のプロジェクトには、プルーフ・オブ・イグジステンス(proof-of-existence)フレームワークを伴う学業証明書の認証、車両ライフサイクル、ホテル登録管理などがある。
Facebook「リブラ」も敬遠したインドだが、技術には積極的
インドでは、多数のブロックチェーンプロジェクトが進行中である。
インドのITサービスプロバイダーのテック・マヒンドラ(Tech Mahindra)は2019年10月、安全なデジタル決済を提供するために、オランダを拠点とするブロックチェーンアプリケーションインキュベーターのクアントス(Quantoz)と連携すると発表した。
タタ・コンサルタンシー・サービス(Tata Consultancy Services)も10月に、R3の企業向けブロックチェーン、コルダ(Corda)上で、マルチブランドの消費者ロイヤルティープラットフォームをローンチしている。
インド防衛省のラジュナス・シン(Rajnath Singh)大臣も11月4日、演説で防衛業界におけるブロックチェーンのユースケースの可能性を強調した。
インドはブロックチェーンを受け入れているかもしれないが、仮想通貨事業に対しては規制上の障壁を生み出している。
インド政府は7月、仮想通貨の利用に対して罰金と懲役を提案し、フェイスブック(Facebook)は規制上の問題から、子会社カリブラ(Calibra)の仮想通貨ウォレットをインドではローンチしないと発表した。
中央銀行にあたるインド準備銀行(Reserve Bank of India)もまた、仮想通貨関連企業へのサービス提供を行わないよう銀行に対して指示した。インドの仮想通貨取引所、コイネックス(Koinex)はすでにその結果として閉鎖に追い込まれた。
翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
原文:India Plans to Issue a National Blockchain Framework