イーサリアム財団(Ethereum Foundation)で働いていたバージル・グリフィス(Virgil Griffith)容疑者が北朝鮮で開催されたカンファレンスに参加し、仮想通貨利用についての知識を伝えた容疑で逮捕された。
北朝鮮でのカンファレンスに参加
ニューヨーク州南部地方検察局は11月29日(現地時間)、グリフィス容疑者は感謝祭の日(11月28日)にロサンゼルス国際空港で逮捕されたと発表した。
「渡航中止を求める警告を受けたにも関わらず、グリフィス容疑者はアメリカ最大の敵国の1つ、北朝鮮へと出向き、経済制裁を回避するためにブロックチェーン技術を利用する方法を聴衆に教えたとされている」とジョン・デマーズ(John Demers)司法次官補(国家安全保障担当)は声明で述べた。
訴状は具体的に、国際緊急経済権限法違反をあげた。
北朝鮮は4月、平壌ブロックチェーン&仮想通貨カンファレンス(Pyongyang Blockchain and Cryptocurrency Conference)を開催した。訴状によると、グリフィス容疑者は北朝鮮への渡航許可は拒否されていたにも関わらず、カンファレンスに参加しようとした。同容疑者は許可を得ることなく、おそらく中国を経由してカンファレンスに参加したと見られている。
FBIの訴状
グリフィス容疑者に対する訴状はFBI(連邦捜査局)のブランドン・M・キャバノー(Brandon M. Cavanaugh)特別捜査官がまとめた。特別捜査官は、同氏とグリフィス容疑者は5月22日、キャバノー特別捜査官が「同意の上の尋問」と呼ぶものを行ったと記した。
訴状には次のように記されている。
「北朝鮮の仮想通貨カンファレンスにおいて、グリフィス容疑者と他の参加者は、ブロックチェーンや仮想通貨技術が北朝鮮のマネーロンダリングや制裁回避にどのように利用できるか、そして北朝鮮がこれらの技術を利用して、いかにして国際的な銀行システムからの独立を達成できるかを議論した」
宣誓供述書には、特定の仮想通貨の名前はあげられておらず、グリフィス容疑者は「仮想通貨-1」と表現されているものについての専門知識を有しているとだけ書かれている。また「北朝鮮仮想通貨カンファレンスの後、グリフィス容疑者は北朝鮮と韓国の間の仮想通貨-1の取引を円滑化する計画を練り始めた」としている。
尋問の中でグリフィス容疑者は、捜査官にカンファレンスの写真や書類を見せ、2020年に再び開かれるカンファレンスにも参加したいと述べた。
リンクトイン(LinkedIn)のページによると、グリフィス容疑者は2016年10月からイーサリアム財団に勤務し、特別プロジェクトの責任者を務めていた。
イーサリアム財団の声明
報道の後、財団はCoinDeskに声明を送り、状況を認識し、見守っているとして、「司法省の書類に記されたイベントにおいて、グリフィス容疑者はどのような立場でも当財団を代表しておらず、財団は、プライベートで行われた北朝鮮への渡航を承認も支援もしたことはないと確証している」と述べた。
グリフィス容疑者の弁護士とは、まだ連絡が取れていない。
訴状では、グリフィス容疑者は他国での市民権獲得に興味を示しているとされている。容疑者のリンクトインのページには現在、主にシンガポールに暮らしていると書かれている。グリフィス容疑者は最近、イーサリアムをイスラム法に準拠したものにすることに取り組んでいた。
今回の事件は、ニューヨーク州南部地方検察局のテロリズム・国際麻薬ユニット(Terrorism and International Narcotics Unit)が担当、対諜報・輸出規制セクション(Counterintelligence and Export Control Section)の支援を得ている。
「この宣誓供述書は(逮捕のための)相当な理由を示すという限られた目的のために提出されたもので、捜査で得られたすべての事実を含むものではない」とキャバノー特別捜査官は述べた。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Mansudae Monument at June 11, 2014 in Pyongyang, North Korea. (Photo by: Attila Jandi / Shutterstock.com)
原文:US Arrests Ethereum Developer for Training North Koreans to Evade Sanctions