テクニカル分析は予測か、本末転倒か【後編】──7人のトレーダーに聞く

昨日公開した「テクニカル分析は予測か、本末転倒か【前編】──デスクロスがやって来る」に続き、CoinDeskは、7人のプロの仮想通貨トレーダーにテクニカル分析(TA)について聞いた。

グレッグ・シポラロ氏(デジタル・アセット・リサーチ)

「TAを信じていない。何か一貫性があり、役に立つものが見つかれば利用するが見つけていない。三角のチャートパターンを振り回しているだけに思える」

「真にファンダメンタルなニュースが存在しないため、人々はチャート、価格、取引高に頼っている。その意味では、FXやコモディティの短期取引により近いが、私がプレーする場ではない。常にある意味、ダークな技術だ」

「9000ドル、1万ドルといった数字で、支持線や抵抗線が見られる時がある。そうした水準を超えたり、割ったりすると、突然、価格が上下する。だがそれは多くの人が同じ数字に注目しているからだ」

ジョー・ディパスクエール氏(ビットブル・キャピタル)

「ビットブルでは、テクニカル分析分析はアクティブ・マネジメントの重要なパートであり、ニュース分析と合わせると、可能性のある変動パターンや下落/上昇の限界を明らかにすることに成果を発揮している。仮想通貨市場はボラティリティが高く、通常は投機に動かされるため、テクニカル分析は価格変動の重要な指標、特に支持ゾーンと抵抗ゾーンを提供してくれる」

「中国メディアの過剰報道による10月末の価格高騰は持続することのない投機に促された価格変動の格好の例で、今は以前に我々が示していた支持線の8100ドル付近に落ち着いている。テクニカル分析によって我々は、中国の習近平国家主席のスピーチ後の高値は一時的なもので、8000ドルを少し上回るところに落ち着くだろうと信じていた」

「テクニカル分析を使うことで、我々は仮想通貨のボラティリティを避けて取引し、自信を持って安値で買い、高値で売ることが可能になる。例えばここ1年(2018年11月1日〜2019年11月1日)、ビットコイン価格は44%回復した。一方、ビットブルのオポチュニスティック・ファンド(Opportunistic Fund)はその約2.3倍となる101%のリターンをあげた」

デビッド・マーティン氏(ブロックフォース・キャピタル)

「私が2016年に仮想通貨の取引を始めた時、純粋にテクニカルな観点から行っていた。ビットコインも、その機能も理解していなかったが、ボラティリティが高いので取引がしたかった。主に支持線と抵抗線、ウェーブサイクルとフィボナッチ・リトレースメントに頼っていた。ファンドでは利用していない」

「ファンドでは主に機械学習アルゴリズムを使っている。だが私が思うに、テクニカル分析は仮想通貨で実際により良く機能する。なぜなら株式や他の資産クラスに存在するようなファンダメンタルズ分析がないから。それ以外に何をもとに取引すればいいのか?」

「例えば、アップル株を取引しているとすると、株価を左右する外部のマクロ要素は数多くあるだろう。テクニカル分析は一部にはなり得るが、唯一のものではない」

「仮想通貨はまだ個人投資家が中心なので、皆がチャート・パターンを見ている。だから皆が行っていることを理解すれば、取引をさらによく理解できる。つまり、テクニカル分析のテクニカル分析だ。一旦、皆が支持線や抵抗線がどこにあると考えているかを見極めれば、ほかの皆が市場をど読んでいるかに基づいて取引することができる」

マーティン・ガルシア氏(ジェネシス

「トレーダーはテクニカル分析を非常に気にかけている。トレーダーは市場で短期的に取引している。投資家はそれほどではない。我々が市場で決断する時は、マクロ環境を見て、ファンダメンタルズを見て、そしてチャートを見る」

「仮想通貨にはあまり明確なファンダメンタルズがないため、テクニカルを見る必要がある。全般的に見て、ほとんど自己達成的な予言のようなものだ。テクニカル分析を多くのトレーダーが注目しているツールと考えれば、皆が同じ指標に注目し、同じものを見て、それに従って投資戦略を調整している」

ビッグ・コーニス

「私はテクニカル分析を強く信じ、そしてテクニカル分析はビットコインをチャートで示し、我々が市場構造のどこにいるのかを見極めることができると強く信じている」

「ビットコインは通常、横ばいで推移する。ほとんどの場合、レンジがあり、価格の動きは非常に退屈となり得る。薄い市場だから、個人投資家が引き金となる価格変動は多くはない。市場が非常に薄いという事実だけをもとにしても、価格を数百ドル押し上げるために数百万の買い以上のものは必要ない」

「私はより広範な大局的な視点を取り、我々が市場のどこにいるかを総合的に感じ取るためにデイリーチャート、3日間チャート、ウィークリーチャートを見ることが好きだ。自分のチャートの特定の期間を見て、指標がこのレベルに達したら、買いの良いチャンスだと伝える。だが、下落を続けるなら、間違った期間を見ていることを伝えているという事実を受け入れる」

ダン・マツゼウスキ氏(サークルの元トレーダー、CMSホールディングスのパートナー)

「私は、テクニカル分析は概ねインチキと考えている。我々は確かに、人々がどこにストップを設定しているのかを知りたいが、我々が取引をする場合は、市場の非効率性を見つけ出し、それらを裁定取引するだけ」

「『よし、ビットコインが50日移動平均線を超えた』と言う以上のことを行っている。テクニカル分析は我々のやり方ではない」

ニコラス・メルテン氏:データダッシュ(DataDash)のトレーダー

「短期的には、テクニカル分析はまったく無意味と考えている。唯一、意味があると言えるのは、直近の安値と高値がどこにあるのか、そこに一貫性があるのかを見極め、1時間チャート、またはデイリーチャートで参入と撤退を見極めるための水準として支持線と抵抗線を使うネイキッド・トレーディングだけだ」

「例えば、8000ドルを複数回など、ロウソク足チャートが常に頂点に達していて、ビットコインでロングポジションを持っているとしたら、利益を出すか、ポジションをクローズする良いタイミングかもしれない」

「指標に関しては、私はウィークリーの時間枠でのみ利用している。長期的な時間枠の方がモメンタムを測ることはずっと簡単。ウィークリーチャートでのMACDは、大まかな底値と高値を予測することに長けている。デイトレーディングにとっては、あまり効果的な戦略ではない」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Is Technical Analysis Prophetic or Preposterous? We Asked 7 Crypto Traders