ブロックチェーンで太陽光エネルギーをP2P取引:パワーレジャーとインド政府が実験

オーストラリアのブロックチェーン・スタートアップ、パワーレジャー(Power Ledger)は11月28日(現地時間)、インドのウッタル・プラデーシュ州でピア・ツー・ピア(P2P)の太陽光エネルギー取引プラットフォームをテストする計画を発表した。

ソーラーパネルの電力を近隣家庭とP2P取引

電力会社のUPパワー(UP Power Corporation Limited)と同州の新&再生可能エネルギー開発局(New and Renewable Energy Development Agency)によるこのパイロット・プロジェクトは、屋根にソーラーパネルを備えた世帯がブロックチェーン・プラットフォームを通して近隣の人々と電力を取引できるようにすることが狙いとUPパワーは述べた。

パワーレジャーは、このプロジェクトの指揮をとる官民連携のインド・スマート・グリッド・フォーラム(India Smart Grid Forum:ISGF)に加わった。

「我々は政府や州の電力会社と直接連携して、インドのエネルギー市場においてブロックチェーン・ソリューションを試していく」とパワーレジャーの共同創業者ジェマ・グリーン(Jemma Green)氏はCoinDeskに語った。

「インド最大の州でのISGFパイロット・プロジェクトとともに、我々は国際的に勢いを増している」

パイロット・プロジェクトの第1フェーズは2020年3月に完了する予定だ。

「結果はウッタル・プラデーシュ州全体でP2P太陽光エネルギー取引を展開するための規制と市場を作ることに役立つだろう」とグリーン氏は語った。

スマートメーターで電力を管理

ISGFのエグゼクティブディレクター、リーナ・スリ(Reena Suri)氏によると、各家庭はブロックチェーン上で実行されるスマートコントラクトを通じて、リアルタイムで価格を設定し、エネルギー取引を追跡し、余った太陽光エネルギー取引を決済できるようになる。

これはパワーレジャーのプラットフォームに統合されたスマートメーター・システムによって可能となる。

「事前の手続き、プランニング、場所の選択が完了し、スマートメーター・インフラが配備されれば、パワーレジャーは設定を開始し、すべての主要な利害関係者と協議して、ダイナミック・プライシング・Xグリッド(Xgrid)P2Pエネルギー取引プラットフォームの展開に向けた取引ロジックを完成させる」とグリーン氏は述べた。

今回のプロジェクトは、ブロックチェーン技術を促進し、太陽光エネルギーの生産能力を高めることで化石燃料への依存を抑えようとするインドの取り組みの中で生まれた。

化石燃料の削減を目指す

パワーレジャーがこのパイロット・プロジェクトを発表した同じ日に、インド電子情報技術省のサンジェイ・ドートレ(Sanjay Dhotre)閣外大臣(※日本の副大臣に相当)は、政府はナショナル・レベル・ブロックチェーン・フレームワーク(National Level Blockchain Framework)を準備していると語った。

この新しいフレームワークでは、分散型台帳技術の可能性と、異なるユースケースのための共有インフラの必要性が議論されることになるとドートレ閣外大臣はインド下院からのブロックチェーン研究と普及に関する質問に答える書簡の中で述べた。

一方、このパイロット・プロジェクトはまた、化石燃料が生み出すエネルギーの利用を削減しようとするインド政府の取り組みも反映している。

インド政府系のシンクタンク、National Institution for Transforming Indiaのレポートによると、同シンクタンクは2022年までに再生可能エネルギーで175ギガワットを作り出す政府の取り組みの一環として、同年までに40ギガワットのソーラーパネルを配備するための資金供給要件とビジネスモデルを検討している。

オーストラリアでの実験にも傘下

2016年に設立されたパワーレジャーは、エネルギー取引プラットフォームを提供することで同社ブロックチェーン技術の商業化を狙っている。同社ウェブサイトによると2017年10月、同社はソフトウエア開発のためのトークンセールスを通じて2300万ドル(約25億円)を調達した。

パワーレジャーはまた、西オーストラリア州の都市フリーマントル(Fremantle)での「スマートシティ」実験に参加するために、オーストラリア政府から169万ドル(約1億8500万円)を手に入れた。

同社のプラットフォームは、プルーフ・オブ・オーソリティー(proof of authority)ネットワークに基づいており、イーサリアムベースの独自のERC-20トークン、POWRを備えている。

「パワーレジャーはオーストラリアをはじめ世界中で我々のプラットフォームの拡張を続け、既存の送電インフラを通してエネルギーをより効率的に送電する方法をエネルギー小売各社が利用することを支援するために技術を高めている」とグリーン氏は述べた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Power Ledger, Indian Government to Boost Renewables With P2P Energy Trading Initiative