スイスの仮想通貨投資商品プロバイダー、アムン(Amun)は、バイナンスコイン(BNB)に連動した上場取引型金融商品(ETP)に機関投資家が高い関心を示していると語った。
機関投資家との会議はすでに予定がいっぱい
アムンのマネージング・ディレクター兼上場投資信託(ETF)の責任者ローレント・クシス(Laurent Kssis)氏は、ロンドン、チューリッヒ、ミラノ、スカンジナビアで開催される同社の機関投資家向け説明会はすでに、ヨーロッパの30を超える機関投資家とのミーティングの「予定でいっぱい」と述べた。
説明会は先週始まり、12月6日(現地時間)まで続く予定で、潜在顧客にBNB ETPをアピールするためのものだ。潜在顧客は主に「資産の幅広いポートフォリオの一部として、仮想通貨が持つリスクを抱えることへの委任を受けている可能性がある適格投資家」だ。
ミーティングはヘッジファンドやファミリーオフィスとのもので、一部、アセットマネージャーとのミーティングも予定されている。個別ミーティングは予定の定員数を超えたため、アムンはランチミーティングなど、投資家が参加できるイベントをさらに追加した。
もちろん、ミーティングは注文ではない。しかし機関投資家の関心は、大口の投資家がビットコイン以外にも仮想通貨への興味を広げ始めていることを示しているのかもしれない。
ETPとBNB(上場取引型金融商品とバイナンスコイン)
このETPはスイス証券取引所(SIX)に上場されており、バイナンスと共同開発で10月にローンチされた。各ユニットは1BNBをわずかに超えたところで連動しており、規制済みの伝統的な商品を通じて機関投資家がSIXのエコシステムに参加することを可能にする。
アムンが最初の仮想通貨ETPをローンチしたのは2018年10月、時価総額トップ5の仮想通貨のバスケットと連動した商品だった。クシス氏によると、BNB ETPに対する機関投資家の関心は2019年にローンチされた他のアムンの商品への関心とほぼ一致している。
BNBの供給を定期的に減らす目的でバイナンスが行う措置が、機関投資家にとっては魅力の一部になっているとアムンのリサーチャー、ランレ・ジョナサン・イゲ(Lanre Jonathan Ige)氏は語った。
「これまでのところ、BNBの提供価値の1つはバイナンスが四半期ごとに行うBNBのトークンバーンにあった」とイゲ氏。
BNB保有者はまた、バイナンスのプラットフォーム「ローンチパッド(Launchpad)」でのトークンセールへの参加といった特別優待と割引を受けることができる。2017年にローンチされたBNBは2019年、史上最高値の38ドル(約4100円)まで上昇したが、その後10ドル台半ばまで下落している。
信用取引、レンディング、デリバティブといったBNBが取り込んだ新しい商品とサービスは、マーケットシェアを獲得、維持できれば、もう1つの主要な提供価値になる可能性がある。
このETPのローンチ時に発表されたレポートの中でアムンは、バイナンスコインは「今後12カ月で最高の実績をあげる主要な仮想通貨資産の1つとなる絶好のポジション」にあると述べた。
アルトコインの季節?
富裕な投資家がビットコイン以外の仮想通貨にも興味を示し始めているという考え方を裏付けるように、グレースケール・インベストメント(Grayscale Investmens)の第3四半期レポートは、ビットコイン以外の信託への資金流入が急増し、その約80%は機関投資家からのものであると記した。ビットコイン以外の商品に投資された合計1億440万ドル(約113億円)のうち、8310万ドル(約90億円)は直近の四半期に投資された。
だが、機関投資家がいわゆる「アルトコイン」を好んでいるとは考えない人もいる。リサーチ企業クオンタム・エコノミクス(Quantum Economics)の創業者マティ・グリーンスパン(Mati Greenspan)氏は、いかなる仮想通貨に対しても、さらなる投資を行う興味はほとんどないと述べた。
「私が最も可能性が高いと考えていることは、もちろん証明は非常に難しいが、上昇市場でビットコインを貯めたマイナーの一部が、市場に追加の供給を放出しているということ」とグリーンスパン氏は12月2日のメールに記した。
これがビットコインに売り圧力を加え、週末にかけての10%の下落を引き起こしたとグリーンスパン氏は考えており、トレーダーがビットコインを清算することによって損失を被るリスクを冒して、他のデジタル資産へ移行することを阻む可能性が高い。
今週の売り不足は、多くのトレーダーが将来の価格について推測することを嫌い、何かファンダメンタルでの変化がない限り、ビットコインを保有し続けることを示唆しているとグリーンスパン氏はCoinDeskに語った。
バイナンスコイン(BNB)への興味
これまでのところ、新たな展開がBNBへの関心を高めてきた。
ロンドンに拠点を置く仮想通貨仲介企業グローバルブロック(GlobalBlock)のディレクター、デビッド・トーマス(David Thomas)氏は、9月のバイナンスUSのローンチを受け、顧客がBNBの購入について問い合わせをしてきたと述べた。
だが、これは諸刃の剣でもある。
11月、仮想通貨メディア「ザ・ブロック(The Block)」は、中国政府による仮想通貨業界への広範な取り締まりの中、当局がバイナンスの上海事務所を訪問したと報じた。最初の報道における「警察の強制捜査」という表現は誇張されていたようで、またバイナンス自体も上海に事務所を持っていたことはないと断言したが、この報道だけでも投資意欲を削ぐには十分だったかもしれない。
ビットコインで市場を溢れさせるマイナーからのさらなる売り圧力は、状況が改善するまで、一部の機関投資家は状況を見守ることを意味するかもしれない。
繰り返しになるが、興味を示すことと実際に投資することは違う。もちろんアムンは、潜在顧客との会議が注文につながることを願っている。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Laurent Kssis, managing director and head of ETFs at Amun
原文:Institutions Are Showing Interest in ETP Tied to Binance Coin, Amun Says