中国eコマース市場シェアで第2位のJD.com(京東商城)は12月6日、都内で会見を開き、同社が社内で進めているブロックチェーンの利用ケースを説明し、今後さらに同技術の活用を拡大していくことを明らかにした。
「テクノロジー・ビッグバン」の時代の中で、最も影響力のある5つの技術は、ブロックチェーン(Blockchain)、人工知能(AI)、セキュリティ(Security)、モノのインターネット(IoT)、クラウド(Cloud)で、JDはその英語名の頭文字をとって「BASIC」と呼ぶと、JDでクラウドプロダクトのマーケティング・マネージャーを務める張帆(Fan Zhang)氏が会見で述べた。
習近平国家主席が10月にブロックチェーン技術への投資を拡大し、その利用を推進する意向を示すと、中国の産業界ではブロックチェーンの開発を進める動きが活発化してきている。同国のブロックチェーン開発に詳しい関係者によると、「大手テクノロジー企業は以前からその開発をステルスに進めてきており、習氏の発表を機に、各社の取り組みが明らかになってきた」と話す。
JDは現在、eコマース・物流・倉庫・配送までの流れの中でブロックチェーンを積極的に活用。張氏は、粉ミルクのような食品や薬品などのトレーサビリティを目的としたブロックチェーンの実際の活用事例を紹介。倉庫や配送の際に、QRコードでその商品の製造元が分かるような取り組みを進めている。
インターネット裁判所で既に利用されるJDのブロックチェーンサービス
「(中国の)多くの消費者は、商品情報の偽造に対する強い懸念を持っている。食の安全を確保する上で、ブロックチェーンを活用する意味は大きい」と張氏は言う。
JDは2002年にEコマース事業を開始。店舗数は約700万、ユーザー数は10億人を超える。中国におけるB-to-C向けのeコマース市場のシェアは、アリババグループの「Tmall(天猫)」とJDが運営する「京東商城」で、全体の8割以上を占めると言われている。
JDは、物流において配送業者などが参加できるコンソーシアム・ブロックチェーンを形成する一方で、ブロックチェーンを用いた金融資産のデジタル化を実現するソリューションをすでに開発しているという。
また、JDが開発したブロックチェーンを基盤とするサービスプラットフォームでは、請求書や契約書を管理することができ、広州や北京のインターネット裁判所でインターネットを通じてそれらを利用することが可能だ。これによって、今まで60日かかっていた仲裁期間を7日に短縮できるようになったという。
さらに同プラットフォームでは、インターネットや他のブロックチェーンの情報を収集し、ビッグデータとして検索することも可能だと説明した。
張氏は、英シェフィールド大学でコンピュータ・サイエンスを学んだ後、2017年に京東に入社。現在、ブロックチェーン関連製品を担当している。
取材・文:佐藤茂、小西雄志
写真:Shutterstock、小西雄志