デジタル資産カストディ企業のトラストロジー(Trustology)は、役員3人を含む7人の従業員を解雇した。同社のターゲットである大手銀行や機関投資家の仮想通貨分野への参入が予想以上に進まないことがその要因となっている。
今や社員数11人となった同社は、フォーカスするところを変え、現在は仮想通貨ヘッジファンド、取引所、さらには始まったばかりの分散型金融(DeFi)分野を狙っている。
「残念ながら、7人を手放さなければならなかった」とトラストロジーの創業者兼CEOアレックス・バトリン(Alex Batlin)氏は述べた。
「リストラが必要で、規模の縮小も必要だった」
この動きは、2018年はじめの仮想通貨価格の下落に続き、ブロックチェーン業界に現れたさらなる緊縮のサインだ。このニュースは、トラストロジーを支援しているコンセンシス(ConsenSys)がインドとフィリピンで事業停止に追い込まれたというニュースに続いた。
ほぼ1年前、トラストロジーはシードラウンドでコンセンシスと、テクノロジーにフォーカスしたクオンツファンドのVC部門であるツーシグマ・ベンチャーズ(Two Sigma Ventures)から800万ドル(約8億8000万円)を調達した。
トラストロジーは、銀行や機関投資家に代わって仮想通貨を安全に保管するエンタープライズ・グレードのカストディ技術を構築するというビジョンでスタートした。
過去1年間、銀行と数多くコンタクトしてきたとUBS出身のバトリンCEOは語った。ちなみにトラストロジーの創業メンバーには、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、バークレイズ(Barclays)の出身者が含まれている。
しかし、9月にロンドンで開催された今年の国際金融会議「サイボス(Sibos)」は重要な分岐点になったとバトリンCEOは述べた。
「一緒に何かしたいと私が期待したところ──すべての一流銀行──のほとんどと話をすることができ、極めて有意義な会話となった。だが、そこから得ることができたものは1つ。(各行の)次年度予算には、我々がカストディサービスを始めるために必要な予算の準備がなかった」と同氏は述べた。
バトリンCEOは、この要因の一つに仮想通貨の冬、すなわち2017年のブームの後の業界の低迷があると述べた。仮想通貨の冬は大手ヘッジファンドからのバイサイドの需要を減少させた。また多くの銀行は今、ある程度の景気後退に備えており、不要なコストに目を向けているという一般的な事実がある。
「銀行が来年、優先したいと思っているものではまだない」とバトリンCEOは述べた。
「我々が決断したことは、元々2017年に期待していたよりも時間がかかるだろうということ。非常にシンプルに、我々にはより長い助走が必要だった」
仮想通貨カストディに対する銀行の興味を示すサインはまだある。例えばオランダの大手総合金融機関INGグループがカストディ技術を開発しているというニュースを匿名の情報を引用してロイター(Reuters)が伝えた。
バトリンCEOは、時間がかかるということはスタートアップにはよくあることで、投資家も理解していると述べた。
「私がコンセンシスから投資を受け、提携した理由の1つは、CEOのジョゼフ・ルービン氏が極めて長期的なビジョンを持っていたため」
翻訳:石田麻衣子
編集:増田隆幸
写真:Trustology CEO Alex Batlin, photo by Diarmuid Greene/MoneyConf via Sportsfile
原文:Crypto Custody Firm Trustology Cuts Staff as Banks Delay on Digital Assets