フェイスブック・リブラ、ホワイトペーパーから出資者への「配当支払い」削除 全体で9ヵ所変更

フェイスブックのデジタル通貨「Libra(リブラ)」のホワイトペーパーに大きな変更が加えられていたことが、米ジョージタウン大学のクリス・ブラマー教授の調査(PDF)で分かった。

特に大きな変更は、2つの項目が“削除”されたことだ。協会が加盟企業に対して発行するとしていたインベストメント・トークンに関する記述と、「出資した投資家に対して配当を支払う」という記述が削除されている。これらは、協会加盟企業にとってのインセンティブを損ないかねないもので、今後の新規加盟への影響が懸念される。

白書の変更は全体で9ヵ所

ブラマー教授は、リブラ協会が発表した6月24日時点のホワイトペーパーと、10月13日公開の変更バージョンを比較。全体で9ヵ所変更されており、その内訳は、置き換え1、挿入2、削除5、アノテーション(メタ情報)の削除1だったという。

特筆すべき変更は冒頭で紹介したように、2項目に関する削除だ。

まずリブラ協会が発行するとしていたインベストメント・トークンについての記述がなくなった。もともとリブラ構想では、複数の法定通貨を裏付け資産としたステーブルコイン(リブラ)と、出資企業に付与されるインベストメント・トークンの2種のトークンが発行される予定だった。

もう一つの変更は配当について。更新後のホワイトペーパーでは、「リブラリザーブで得られた金利はエコシステムの維持とトランザクション手数料を抑えるのに使うわれるほか、さらなる成長と普及を支えるために使われる」とされている(以下引用)。

Interest on the reserve assets will be used to cover the costs of the system, ensure low transaction fees, and support further growth and adoption.

しかし当初、ここには「“pay dividends to investors who provided capital to jumpstart ecosystem”(エコシステムを一気に活性化させるため、資本を提供した投資家には配当を支払われる)」との文言があったが、これが削除されたようだ。

このほかにも、更新されたホワイトペーパーからは、既に協会を脱退したVISAやマスターカードなどについても削除されている。

目的は「有価証券」問題の解消か

これらの変更の目的は、ステーブルコインであるリブラが有価証券にあたるとされる問題や、リブラの利用者と協会加盟企業に生じると指摘されていた利益相反問題を解消することと見られており、ブラマー教授もそう指摘している。

今回のホワイトペーパーの変更が、米国証券取引委員会や米国議会などと進んでいる議論にどういう変化をもたらすのか。そして、逆風が吹きつけるリブラプロジェクトの巻き返しにつながり、来年以降、当初の構想を実現するのか。引き続きの注視が必要だ。

文・編集:濱田 優
写真:リブラ協会Webサイト