欧州中央銀行(European Central Bank:ECB)は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が実現した場合の解決策を検討している。
プライバシー保護とAML/CFTを両立
12月17日(現地時間)に公表されたレポートにおいて、欧州中央銀行(ECB)は将来の中央銀行デジタル通貨(CBDC)ユーザーに対して、小売取引の際に限定されたプライバシーを付与するための「匿名バウチャー」を開発したことが明らかとなった。
欧州中央銀行の「奇抜な新しいコンセプト」は、デジタル決済において衝突する2つの力の架け橋となることを目指している。つまり、プライベートな取引を望む欧州市民の要求と、アンチマネーロンダリング(AML)の行使を求める規制当局の要求だ。
「現在進行中の経済のデジタル化は決済エコシステムにおける重要な課題となっており、電子決済においてある程度のプライバシーを許容することと、マネーロンダリングとテロへの資金供与対策を目的とした規則(AML/CFT規則)の遵守を確保することの間でバランスを取ることを求めている」とレポートのエグゼクティブ・サマリーは記した。
口座残高に関わらず「定期的な間隔」ですべての口座保有者に発行される匿名バウチャーは、取引を保護するために1対1で引き換えられることになるとレポートは記した。
提案されたシステムでは、仮にアリスがボブにCBDCトークンを匿名で送りたい場合、アリスは送りたいトークンと同じ数の匿名バウチャーを保有している必要がある。匿名化された取引は、ECBが提案している、すべての取引をチェックするAML当局の審査をスキップできる。
しかし、仮にアリスが十分なバウチャーを持っていなければ、匿名で送金することはできない。ECBは、バウチャーは個人間で譲渡できず、「時間制限」があり、AML当局によって限定数でリリースされると述べた。
レポートによると、匿名バウチャーは「単に、匿名で送金できるCBDCの数を制限するために使われる技術的ツール。これはユーザーが費やしたCBDCの数を記録することなく、匿名でのCBDC送金の制限が可能でありことを意味する。つまり、ユーザーのプライバシーは守られる」。
ツイートの中で、ECBはこの研究成果を、CBDCの中でプライバシーへの懸念と規制上の必要性を共存させることができた証拠として称賛した。
我々の最新研究は、中央銀行デジタル通貨のための単純化した決済システムの構築が可能であることを示した。そうしたシステムは、少額取引の場合にはユーザーのプライバシーを保護し、一方で高額取引はアンチマネーロンダリングのチェックを受けることを保証する。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:ECB image via Shutterstock
原文:‘Anonymity Vouchers’ Could Bring Limited Privacy to CBDCs: ECB Report