リブラとは違う──デジタル人民元は法定通貨に裏付けられない:中国人民銀行高官

中国の中央銀行「中国人民銀行」の穆長春(Changchun Mu)デジタル通貨研究所長は、中国の「デジタル人民元」は安定した価値を維持するための通貨バスケットを必要としないと述べた。

通貨バスケットは必要としない

穆所長は12月21日(現地時間)、北京で開かれた金融フォーラムで報道陣に対して、デジタル人民元はリブラ(Libra)を含めた他の仮想通貨とは異なる形態のものになると述べた。

「デジタル人民元は投機目的で使われるものではない。人民元は投機ではなく、支払いに使われている。デジタル人民元はビットコインのような投機的な性質は持たず、ステーブルコインのように通貨の価値を裏付ける通貨バスケットも必要としない」と穆所長は述べた。上海証券報(Shanghai Securities News)が伝えた

中国人民銀行が、デジタル人民元を従来の人民元で裏付けることの代わりとなる仕組みを準備しているのか否かはわからない。

中国人民銀行のデジタル通貨研究所は、公式にはデジタル通貨電子決済(Digital Currency Electronic Payment:DCEP)と呼ばれるデジタル人民元の開発に過去5年間、取り組んできたと伝えられている。

中国人民銀行の元総裁は11月、同行はデジタル人民元の2つの主要なユースケースを想定していると語った。すなわち、小売決済の円滑化と、国境を超えた決済の新しい手段となることだ。

リブラの登場で加速

関係者らは、6月にフェイスブック(Facebook)がリブラを発表したあとすぐ、デジタル人民元についての詳細を明らかにし始めた。

同様に、より安く、より速い送金ソリューションとして設計されているリブラの価値は、リブラ協会が提供するユーロ、英ポンド、米ドルを含めた世界の主要通貨のバスケットに裏付けられる予定。中国は、民間企業によるデジタル通貨が市場シェアを獲得することを懸念していると伝えられ、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行する初の主要経済大国となると考えられている。

デジタル人民元の開発ロードマップについて語る中で穆所長は、中国人民銀行のエンジニアの仕事はほぼ完了していると述べた。

「現在、中国人民銀行のデジタル通貨DCEOはトップレベルの設計、基準の制定、機能の研究開発、結合テストとデバッグをほぼ完了している」

中国人民銀行はまもなく、テンセント(Tencent)やアリババのアント・フィナンシャル(Ant Financial)などのパートナーを通じて、デジタル人民元を中国国民に対して徐々に発行し始めることが可能な段階を迎える。

中国はデジタル人民元を利用して国民への監視を強めることができると批判する声もあるが、穆所長は、違法行為を疑われるものは追跡できる能力を持ちつつも、中国人民銀行は取引において現金と同じレベルのプライバシーを保証すると述べた

中国人民銀行は11月、某ウェブサイトがデジタル人民元は11月20日に発行されると伝えた後、まだテスト段階にあると発表した。同行関係者は以前、12月10日以前のリリースの可能性を否定していた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Image via Shutterstock
原文:Unlike Libra, Digital Yuan Will Not Need Currency Reserves to Support Value: PBOC Official