ECB(欧州中央銀行)は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発における役割を拡大することを強く望んでいる。だが、これは民間企業が参加できないことを意味するわけではないとクリスティーヌ・ラガルド総裁は述べた。
CBDCタスクフォースが発足
1月8日(現地時間)、フランスのビジネス誌「Challenges」のインタビューでラガルド総裁は、ECB(欧州中央銀行)は仮想通貨において積極的な役割を果たしたいと繰り返した。企業や個人が24時間絶え間なく、多くの国境を越えた決済を行っているなか、ラガルド総裁は、ECBは「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の実現可能性とメリット」を引き続き調査すると述べた。
以前、ECBはCBDCに関して「先手を打つ」べきと述べたラガルド総裁は、ECBはその管轄外で作られる仮想通貨を妨げたくないと付け加えた。
「中央銀行の取り組みは、ユーロ圏での迅速かつ効率的な小売決済のための民間主導のソリューションを妨げたり、締め出したりすべきではない」
CBDCはEU(欧州連合)の金融セクターや将来の金融政策の変化に極めて大きな影響を与える可能性があるとラガルド総裁は述べた。ECBは2019年12月、仮想通貨に関するタスクフォースを立ち上げた。タスクフォースは、ユーロ圏の各国の中央銀行と密接に協力し、将来のユーロ圏のCBDCのメリットとコストを把握していく。
リブラが引き起こしたCBDCへの関心
CBDCへのグローバルな関心は2019年夏、フェイスブック(Facebook)のリブラ(Libra)が発表が契機となった。中国人民銀行(PBOC)は長年、「デジタル人民元」に取り組んできたが、中国は昨年夏の終わり頃からようやくその情報を公表し始め、デジタル人民元の発行前に、リブラが市場シェアを奪う可能性があることを懸念していると伝えられた。
加えてCBDCは「物理的な現金が最終的に減少する」場合に、おそらく民間の仮想通貨の取り組みとともに、市民に取引手段を提供する可能性がある。
ほとんどの中央銀行は、仮想通貨、CBDC、法定通貨の間の関係を排他的かつ敵対的と述べている。退任間近のイングランド銀行のマーク・カーニー総裁は2019年、複数の法定通貨に裏付けられたCBDCはグローバルな基軸通貨としての米ドルに取って代わる可能性があると述べた。IMFのチーフエコノミスト、ギタ・ゴピナス(Gita Gopinath)氏は、CBDCを含む仮想通貨には重要なインフラがなく、ドルに十分に対抗するための世界的な支持も得られていないと主張した。
ラガルド総裁は、仮想通貨は旧来の金融システムの多くの問題点に対処できるが、ユーザーに新たなリスクをもたらす可能性もあると述べた。2019年12月、同氏はフェイスブック(Facebook)は自社のデジタルプラットフォームを利用して競合するステーブルコイン・オペレーターを締め出し、不当なメリットを得る可能性があるとの懸念を示した。
翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Christine Lagarde image via CoinDesk archive
原文:ECB’s Lagarde: We Want to Develop Digital Currencies but Won’t Discourage Private Initiatives