「パブリックブロックチェーンが次の未来」──4大会計事務所EY、ブロックチェーン協会定例会で事例報告

「パブリックブロックチェーンが次の未来だ」──。ブロックチェーンへの注目が高まる中、ビジネスでは多くの大企業が、秘匿性の観点からパブリック型ではなくプライベート型(コンソーシアム型)を選ぶ傾向にある。しかし、世界4大会計事務所・コンサルティングファームであるEYが、1月28日に開かれた日本ブロックチェーン協会(JBA)の定例会で、パブリックブロックチェーンを重視する姿勢を改めて明らかにした。

プライベート・ブロックチェーンの限界とは

発表したのはEYのコンサルティング会社、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングのパートナー荻生泰之氏とシニアマネージャーのダバダッタ・ミシュラ(Dabadatta Mishra)氏。

一般にブロックチェーンは、パブリック型とプライベート型に分かれる。パブリック型はブロックチェーンの検証者に制限を設けず、誰でもブロックチェーンのデータを検証できるものを指し、プライベート型はブロックチェーンの検証者を制限するものを指す。

発表でミシュラ氏は、「ブロックチェーンの未来はパブリックだ」と述べたが、一方で、同社は現状のニーズの高さからプライベート型のソリューションも提供している。しかし、「プライベート・ブロックチェーンを使う事業者たちは、互いにつながるのが困難だと理解しはじめた」とも指摘した。

ミシュラ氏は、EYが作成しているEY OpsChainについても紹介。これは企業がブロックチェーンを用いて、サプライチェーンや金融でビジネスをするのを助けるものだ。またEY Blockchain Analyzerというブロックチェーン・データを分析するツールを使って監査できることも説明。そのほか、EYが伝統的に提供してきたプロフェッショナルサービスも提供できるとした。

EYのブロックチェーンの取り組み

同社が提供するEY OpsChainは、パブリック型のイーサリアムと、プライベート型の「クオラム」で使うことができる。クオラムとは、JPモルガン・チェースがイーサリアムを基盤に開発したプライベート・ブロックチェーン。

クオラムを使う理由については、将来的にプライベート型をパブリック型に移行することが「とても容易だから」と述べた。

EY OpsChainの仕組み

EYはパブリックのイーサリアム上で、秘匿性のある取引を実現する技術「ゼロ知識証明」を組み込んだソフトウェアも開発している。これは「Nightfall」と呼ばれるもの。このようにEYは、かねてからパブリックを重視してきている。

水産物のサプライチェーンに、ブロックチェーンを

また同社パートナーの荻生氏は、日本政府や各省庁のブロックチェーンに関する取り組みを紹介。たとえば日本の水産物を対象にしたサプライチェーン追跡では、中国に輸出する場合を説明した。輸出する水産物の課題は、中国の消費者は「日本産」であると言われても、それを信じられないことだ。

荻生氏は、中国の人は「1.5倍でも買う」という調査を紹介し、ブロックチェーンを用いて真正性を証明するコストに見合う可能性を示唆した。追跡では、輸送中の温度管理なども含めて把握し、安全かつ品質の高い商品であることを、最終的な消費者まで証明するという。

文・写真:小西雄志
編集:濱田 優