仮想通貨取引所ビットトレックス(Bittrex)は、コールド(あるいはオフライン)ストレージに保有しているデジタル資産に最大3億ドル(約330億円)の保険をかけた。仮想通貨取引所としては過去最高の補償額となる。
物理的な侵入による盗難もカバー
ビットトレックスは2020年1月30日(現地時間)、ユーザーの資産を「外部からの盗難や内部での共謀」の際に保護する仮想通貨保険に加入したと発表した。
ビットトレックスのビル・シハラ(Bill Shihara)CEOは最大3億ドル(約330億円)まで補償するこの保険は「安心感」を提供し、同社が「あらゆる決断と先進的なブロックチェーン技術において、セキュリティーを優先することにコミット」していることを顧客に示すだろうと述べた。
この保険の引受人は、企業に特化した保険を提供するアーチ・シンジケート2012(Arch Syndicate 2012)。補償内容はビットトレックスが社内セキュリティーとコンプライアンス手順を示した後に承認され、世界最大級の保険市場であるロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd’s of London)の他のシンジケートも加わっている。
「外部からの盗難」という言葉は、ビットトレックスへの物理的な侵入による盗難を意味するだろう。コールドウォレットは通常、ハッキングに対する脆弱性を持たない。
保険は最大1億5000万ドル(約160億円)の補償額で、内部・外部からの盗難および従業員の共謀による仮想通貨の損失を補償するアーチのブルー・ボールト(Blue Vault)に似ているようだ。
CoinDeskは補償内容をより正確に把握するために、同社に連絡を取っている。
保険会社を設立したケースも
「ブロックチェーン技術や仮想通貨に取り組むビジネスを含め、保険はいかなるビジネスの成長や発展においてもきわめて重要な役割を果たす」
補償内容の立案でビットトレックスをサポートした保険ブローカー、マーシュ(Marsh)のサラ・ダウニー(Sarah Downey)氏はそう語った。
ユーザーの仮想通貨を保有する企業の間で、保険による補償は増加している。
カストディーソリューションを提供するクノックス(KNØX)もロイズによる保険を提供しており、最大1億ドル(約110億円)の損失をカバーする。ウィンクルボス兄弟は2020年1月、自分たちが率いる仮想通貨取引所ジェミニ(Gemini)のユーザー向けに最大2億ドル(約220億円)の損失を補償する保険会社を設立した。
コインベースは同取引所のホットウォレットに保管されている仮想通貨に対する第三者からの攻撃に対して最大2億5500万ドル(約280億円)の保険をかけ、これまで仮想通貨業界で最大の補償額を誇っていた。ビットトレックスの新しい保険によって、補償額は4500万ドル(約50億円)上昇した。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Image of Kiran Raj, Chief Strategy Officer at Bittrex, via CoinDesk archives
原文:Bittrex Takes Out Record $300M Insurance on Crypto Held in Cold Storage