仮想通貨をめぐる規制、米国と欧州でなぜここまで違う?

金融規制機関の仮想通貨などの暗号資産に対するアプローチは、アメリカとヨーロッパで 大きく異なる。このギャップは今後、アメリカにおけるデジタルトークンの流動性をより高めることになりそうだ。

米国証券取引委員会(SEC)は、広い視野を持って業界を網羅するルール作りを進める一方で、懲罰的罰金刑につながる判断をも下してきている。実際、米当局が2018年に行ったデジタルトークン関連の法的措置は18件。前年の5件に比べると3倍以上に増え、マーケットの監視人としての存在感を強めている。

一方、大西洋の反対側、ヨーロッパの規制当局は現在、暗号資産に対してどう考えるべきかを熟慮している最中だろう。意思決定をするための体制づくりの検討を進めながらも、デジタル資産を本格的に規制するまでには至っていない。

大西洋を分断するこのギャップは、欧米の法体系や文化の違いにも関係している。

判例法と大陸法

アメリカは判例法(Common Law)の国であるがゆえ、裁判官の決定力は強く、判決はケースバイケースで下され、判例が判決に影響を与えるケースは少なくない。欧州の法律は、ナポレオン法典とも呼ばれる大陸法(Civil Law)を基に作られており、ほとんど全ては、今まで確立されてきた法律によって規制される。時に必要以上に大局的で、敏捷性にかけることはある。

もう一つの大きな違いとして、複数の主権国家が加盟する欧州連合(EU)が下した決断は、各々の国で批准される必要があり、各国の国益の違いによっては、時に欧州全体のイニシアティブを進める上では妨げになることがある。一方、アメリカの連邦政府と州政府との関係はシンプルなものだ。最高裁判所による連邦法施行の長い歴史は、州規制のパッチワークとの相互運用性の大枠をなしてきた。

米当局の規制における不明瞭さに対するフラストレーションは、欧州のそれに比べれば、それほど厄介なものではないだろう。巨大なアメリカ市場の暗号通貨をめぐる規制において、全ての市場参加者はSECの動きを見つめている。

EUは暗号資産と真剣に向き合っていない、というわけではない。欧州証券市場監督局(ESMA)は1月、デジタルトークンにおける共通の定義やパラメーターを明らかにするため、加盟国当局を対象にした数カ月にも及ぶ調査の結果をまとめている。

“至難の業”

報告書は、現行の規制と推奨される新たな規制とのギャップを強調した上で、新たな規制を作り上げることは、付託された権限を超えていると加えた。欧州において、全てのEU加盟国が同意できる規制を作ることは至難の業であり、実現するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

欧州各国は今後、暫定的な施策を用いて、規制された取引所における暗号資産の発行を許可していくだろう。しかし、“小型化”された市場における断片化した規制の下では、トークンの発行を抑制する結果をもたらすことになる。

一方、アメリカでは2019年、SECによるより多くの動きが期待される。未登録の証券の売り出しは罰せられ、上場提案は検査を受け、規制はより明確になってくるだろう。規制づくりが遅々として進まない欧州とは対照的に、アメリカ市場におけるデジタルトークンの流動性はさらに高まってくる。そして、世界の前例となり得るルール作りにおいては、SECへの期待はさらに高まるだろう。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Globe image via Shutterstock
原文:Oceans Apart: Crypto Regulation in the US and EU