時価総額で世界3位を誇る仮想通貨リップル(XRP)は、2020年もまたパッとしない1年を迎えることになる。ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のCEO、マイク・ノボグラッツ(Mike Novogratz)氏は会場一杯のファイナンシャルアドバイザー達を前に、そう語った。
さらにノボグラッツ氏は、同通貨の冴えない見通しの責任は、リップル(Ripple)社にあるとし、自らの会社が最も投資している先の一つを責めた。
デジタル資産やスタートアップの取引、投資を行う会社を率いるファンドマネージャーであるノボグラッツ氏は先週、フロリダ州オーランドでTDアメリトレード(TD Ameritrade)が主催した「ナショナルLINC2020(National LINC 2020)」カンファレンスの壇上で、パーソナルファイナンス界のスーパースター、リック・エデルマン(Ric Edelman)氏と対談した。
対談の終わりにノボグラッツ氏は、登録投資顧問(Registered Investment Advisors:RIA)である聴衆から質問を受け付けた。最後の質問は、リップルのエコシステムのネイティブ仮想通貨であるXRPについての見解に関するものであった。同カンファレンスでの録音は禁止されていたが、CoinDeskは録音音源を参加者から入手した。
「リップル社はXRPを600億枚所有しています」とノボグラッツ氏は述べ、次のように続けた。「それは膨大な数です」
流通しているXRPの合計数は1000億枚である。リップル社のグローバル機関投資家市場担当バイスプレジデント、ブリアンヌ・マディガン(Breanne Madigan)氏によれば、リップル社は800億枚を「与えられた」が、その所有数は560億枚へと減少し、その内489億枚は第三者に預託されており、同社は触れることができない。
それでも、ノボグラッツ氏はXRPをめぐる現状を、企業が継続的に株式を売る状況になぞらえた。
「私が株を買う時に、(誰かによって)100億ドル(約2兆円)相当の同株がいくらかで売られていると知っていたら、その株を買うことに対する喜びは少なくなるでしょう」とノボグラッツ氏は説明した。
SBIも出資するリップル社の反論
リップル社がギャラクシー・デジタルの最大の投資先であるという事実が、この発言を非常に辛辣たらしめる。開示書類によるとデジタル・ギャラクシーは、リップルに2380万ドル(約26億円)をつぎ込み、2019年9月30日時点で2760万ドル(約30億円)と評価している。
XRPを株式に例えることは、リップルにとって特に微妙な問題だ。ここ数年リップルは、XRPが未登録の証券だと訴える集団訴訟を戦っている。訴訟はカリフォルニア州北部の地方裁判所で係争中だ。
マディガン氏はCoinDesk宛のメールの中で「XRPはデジタル資産である」と反論し、次のように続けた。「リップル社やその他企業への出資となるわけではないため、XRPは株式ではない。次に、XRPは支払いのための確かな実用性を持つ。マネーグラム(MoneyGram)やビットソー(Bitso)のような企業は、リップルネット(RippleNet)のオンデマンド・リクイディティ(On-Demand Liquidity:ODL)を通じてXRPを生産で利用している」
リップル社はさらに2019年、プログラムの四半期トークンセールを、第2四半期の2億5100万ドル(約260億円)相当から第4四半期はゼロへと劇的に減らした。
「マイク・ノボグラッツの発言からは、リップル社がXRPの持ち分をどのように管理するかについて同氏が理解していないこと、そして毎四半期に弊社が発表する情報を読む時間をとっていないことがはっきり分かる」とマディガン氏は述べ、次のように続けた。「リップルによるXRPの分配で流通中の供給増加分は実際、ビットコイン(BTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、イーサ(ETH)等よりも少ないのです」
CoinDeskが発言について説明を求めると、ノボグラッツ氏は広報担当者を通じて次のように述べた。「買い手の側では、アジアにはXRPの強力な支持者がおり、強く押し上げる『XRP軍』が存在している」
CoinDeskのまとめたデータによれば、XRPは2019年、その価格を46.3%下げた。今回のオーランドでのカンファレンスにおいてノボグラッツ氏は、その傾向が続くかもしれないと示唆した。
「昨年は著しく業績が悪かった」とノボグラッツ氏は聴衆に対して語り、次のように続けた。「今年もまた著しく業績が悪くなると思います。そしてそれは単に供給が理由なのです」
広報担当者を通じてノボグラッツ氏は、「著しく」という言葉を使ったことを否定したが、録音音源でははっきりとその言葉が聞き取れる。
ビットコインやイーサリアムと比較して
ノボグラッツ氏はオーランドの同カンファレンスにおいて、彼がより中央集権型とするXRPのセットアップとビットコインのそれを比較した。「(XRPは)ビットコインがマイニングで分配されたようには分配されませんでした」とノボグラッツ氏は述べ、次のように続けた。「巨大な1つのプールが、常に売り手としてあるのです」
しかし、メッサーリ(Messari)のデータによれば、リップルはそのネットワークを、時価総額で1位と2位の仮想通貨である、ビットコインやイーサリアムに比べてより分散型に保っている。
「トランザクションを承認するために80%の意見の一致を要件とするXRPL(XRPの分散型台帳)には、150を超える既知のバリデータが存在する」とマディガン氏は説明し、次のように続けた。「リップルはその150強のバリデータのうち7つをコントロールしており、中国のマイニング集団にコントロールされているBTCやETHよりも、XRPの方がより分散化している」
2020年においてこれまでのところ、XRPは素晴らしい復活を見せている。S&P 500が年初と比べてほぼ横ばいなのに対して、XRPの価格は1月1日以降約27%値上がりしている。しかし、細かいことを言うならば、ビットコインの29%の値上がりには確かに及んでいない。
「仮想通貨業界全体が直面し続ける最大の問題の1つは、偽情報である」と、ノボグラッツ氏に関してマディガン氏は述べ、次のように続けた。「喜んで、そして故意に、市場行為を操作するために噂を流す人が非常に多く存在する。透明性という文化にも関わらず、影響力のある市場参加者が事実を無視していることは残念だ。これは仮想通貨業界全体の足かせとなる」
翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Michael Novogratz of Galaxy Digital, image from CoinDesk archives
原文:Galaxy’s Novogratz: XRP Will ‘Underperform Immensely Again This Year’