法人向けブロックチェーンはIBMにとって、売り上げの触媒になっている。ブロックチェーン担当バイスプレジデントのジェリー・クオモ(Jerry Cuomo)氏は語った。
1ドルが15ドルに
「さらなるお金を引き出している」とクオモ氏は述べた。
「ブロックチェーンに実際に費やされたお金の直接的な貢献を見ると、ブロックチェーンへの1ドルの支出は、他のクラウドサービスへの15ドルの支出を引き出している」
この概算からはIBMが現在、ブロックチェーンをどう捉えているかを知ることができる。クオモ氏の概算は、IBMが法人向けブロックチェーンを同社の広範なクラウドサービスに関連付けようとしているなかで生まれた。
一部のコメンテーターは、この動きを分散型台帳技術(DLT)、いわゆるブロックチェーンにまつわる誇大広告が消え去った後の優先順位の変更、あるいは統合と位置づけている。
「ブロックチェーンは新しい法人向けアプリケーション。アプリの現代化、クラウド・ネイティブなアプリ、データや分析といった流れに対応している。こうしたことすべてに関わっている」
そうしたことから、ブロックチェーンソリューションにおけるブロックチェーン技術の割合は全体の20%のみとクオモ氏は語った。残りの80%は他の技術が占めている。
IBMの戦略
全体像はIBMのビジネス戦略の構造変化に関わっている。2019年にオープンソフトウエア大手レッドハット(Red Hat)を340億ドル(約3兆7000億円)で買収したことは成果があったようだ。
2019年第4四半期決算はアナリストにも予想外の成長となった。クラウドおよびコグニティブソフトウエア部門の売上高は6%増、レッドハットは売上高は24%増となった。
加えてIBMは、CEOのジニー・ロメッティ(Ginny Rometty)氏が退任し、新CEOにクラウドおよびコグニティブソフトウエア部門の責任者でレッドハット買収の中心人物であるアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏が就任すると発表。クリシュナ氏は4月6日、正式にCEOに就任する。
IBMの戦略変化に関してクオモ氏は、IBMは「ハイブリッドクラウドにきわめて積極的に投資している」と述べた。
ハイブリッドクラウドは、自社運用のサーバー、プライベートクラウド、パブリッククラウドを組み合わせたもの。ユーザーはそうしたプラットフォームの違いを意識することなく業務を行うことができる。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、その市場規模は約1兆2000億ドル (約130兆円)にのぼる。
幸せな結婚
ブロックチェーンとクラウドの相乗効果の可能性を詳しく述べつつ、クオモ氏はIBMがアレンジしたハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)とクバネテス(Kubernetes)の「結婚式」について指摘した(ハイパーレジャー・ファブリック:リナックスベースの法人向けブロックチェーンプロジェクトのインキュベーション環境。クバネテス:ハイブリッドクラウドシステムのサービスクラスターを自動化し、スケーリングするプラットフォーム)。レッドハットはクバネテスに精通している。
「ハイパーレジャー・ファブリックとクパネテスは相性が良い。ファブリックにスマートコントラクトを導入する方法であるチェーンコード(Chaincode)について我々が行った多くのことは、確立されたセキュリティを備えた、そうしたタイプのコンテナ化された環境における良好な動作を確認すること。レッドハットは我々にそのモチベーションを与えてくれる」
「幻滅期」はブロックチェーン技術の普及の減速を意味するのかという問いに、クオモ氏は反対した。
「私の見解とは180度違う。それどころか、おそらくプロジェクトへの問い合わせ数は安定している。だが私が気づいたことは、プロジェクトのクオリティ、および経営陣などのプロジェクトのスポンサーが自分たちは何を行うかについて本当に良く考えているということ」
2018年を「西部劇」と例えながら、同氏は以下のように付け加えた。
「多くのプロジェクトがあった。成功もあれば、失敗もあった。アイデアは常に完璧というわけではなかった。2020年になり、クライアントはよりスマートになり続けている」
最近、法人向けブロックチェーンでは複数の明らかな縮小があるという事実は残っている。IBMのブロックチェーンビジネスは、まだ流血を続けているのだろうか?
クオモ氏の答えはノー。「我々のブロックチェーンの取り組みはきわめて健全だ」
翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:IBM Blockchain VP: Every Dollar Spent on Blockchain Yields $15 on Cloud