ビットコイン投資家は、5月に予定されている半減期はビットコイン価格を9万ドル(約990万円)以上まで高騰させる可能性があると推測している。
半減期ではなく、コスト「倍増期」
ビットコイン・マイニングに使う高性能コンピューターの運用者にとって、半減期はむしろ、コストの「倍増期」といえる。
仮想通貨に特化したリサーチ企業トレードブロック(TradeBlock)は新しい報告書の中で、1ビットコイン (BTC)をマイニングする平均コストは5月に予定されている半減期の後に1万2525ドル(約137万円)に上昇すると推測している。
この数字は現在の平均コスト6851ドル(約75万円)の2倍近く。つまり、マイナーは現在獲得しているビットコインと同じ量のビットコインを手に入れるためには2倍の演算を行わなければならず、同時に電力消費量も2倍になる。
このコストの推測値は、現在の市場価格約1万300ドル(約113万円)をかなり上回るもので、市場価格が上がらなければ、半減期は仮想通貨マイニング業界の採算性を覆す可能性があることを示している。
半減期はビットコインが約10年前に作られた時に、インフレを防ぐ手段としてプログラムに組み込まれた。ビットコインの新しい供給が予測可能で常に減少を続ければ、ビットコインの購買力を安定させることができるというアイデアだった──中央銀行の人間がしばしば恣意的に発行できる法定通貨とは対照的だ。
半減期に備えるマイナー
現在起こっていることは、コモディティに似た市場サイクルを持つビットコインの新しい経済についての教訓。つまり、仮想通貨マイニング企業はより高速でエネルギー効率に優れた次世代プロセッサーを搭載したコンピューターをアップグレードすることで半減期に備えようと躍起になっている。
JPモルガン・チェースのリサーチャーはビットコイン・マイナーの平均コストをビットコインの「本質的な価値」と表現した。このコストを石油1バレルを汲み上げるために必要なコストと考えてみよう。市場価格の低下によって石油の採算性がなくなるとしたら、多くの採掘業者は価格が上がるまで採掘をやめるだろう。
トレードブロックの1万2525ドルという半減期後のコスト予測は「ハッシュレート」と呼ばれるネットワークの処理能力が現状のままであることを前提としている。またアナリストは、電力料金を1キロワット時あたり6セント(約7円)としている。これは一部の大手マイニング企業が地元送電網や一括購買契約で購入する電力料金の1キロワット時あたり約2セントよりも高い。
もう1つ指摘するなら、トレードブロックの予測ではマイニング・コンピューターの約30%は最新技術に「移行」するが、70%は「旧式マシンのまま」となっている。一部の仮想通貨業界幹部は、多くの旧世代マイニング・コンピューターは半減期後には経済性を失い、より高速のマシンがネットワークを占める可能性が高いと語った。述べている。
いずれにせよ、ビットコイン投資家は事態を注意深く見つめる必要があるとトレードブロックのデジタル通貨リサーチ担当ディレクター、ジョン・トダロ(John Todaro)氏は述べた。
「マイナーが何を考えているか、マイナーが何をしているかを知ることは非常に有用」とトダロ氏は電話インタビューで述べた。
「そうしたレベルでも採算が取れるマイナーがいるかもしれない。だが、損失を出してまで運用するマイナーは多くない。マシンをオフラインにする可能性がある」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:For Crypto Miners, Bitcoin’s Halving Could Mean a Doubling in Costs