投機はブロックチェーンに混雑を引き起こし、仮想通貨の有用性と全体的な価値を損う。イングランド銀行のシニアエコノミストは語った。
投機はブロックチェーンを混雑させる
2007年からイギリスの中央銀行「イングランド銀行」のシニアエコノミストを務めるピーター・ツィンマーマン(Peter Zimmerman)氏は2月14日(現地時間)に発表された報告書に、投機は決済手段としての仮想通貨の有用性を損なうと記した。
報告書によると、ブロックチェーンの処理能力は限られているため、高い使用率はトランザクション速度を低下させ、コストを高める。仮想通貨の価値が決済ツールとしての有用性にあると仮定するなら、ブロックチェーンの混雑は有用性を低め、保有者にとっての価値を低くする。
「決済分野では仮想通貨間の競争が生まれ、投機的行動は通貨としての使用を締め出すことになる。投機はブロックチェーンを混雑させ、仮想通貨の通貨としての価値を損ない、その価格に影響を与える」
投機の横行は実際に仮想通貨の本格的な普及を妨げている可能性があると報告書は記した。また仮想通貨には2次的な「デジタル・ゴールド」としての効果があり、価格の上昇につれて、当初は決済手段として使うつもりだったユーザーの中に、さらなる価格上昇を期待して仮想通貨を貯め込む者も出てくる。
もし投機的な行動をブロックチェーンから排除できるなら、現金決済型のデリバティブ、あるいはライトニングネットワークのようなレイヤー2のスケーリングプロトコルを使って、他のアセットクラスと同じように動作する可能性がある仮想通貨の性質に「重大な結果」をもたらすだろうと報告書は示唆した。
人気トレーディング・ゲームの弊害
ツィンマーマン氏は仮想通貨の主な価値の源泉は決済手段としての有用性だと仮定しているが、同氏はそのモデルはICO(initial coin offering)トークンには同じレベルでは適用されないだろうと考えている。
ツィンマーマン氏はこのモデルは、投機的な行動が「トークンを意図した目的で使うことを難しくする」環境に適用されるとCoinDeskに語った。これはイーサリウムのようなプラットフォーム・トークンだけでなくセキュリティ・トークンのピアツーピア取引を含み得る。そこでは「dapps(分散型アプリケーション)のブロックチェーンへの需要と、投機のブロックチェーンへの需要の対立」が有用性を妨げる可能性がある。
突然、大人気となったイーサリウム・トレーディング・ゲーム「クリプトキティ(CryptoKitties)」は「ブロックチェーンを埋め尽くし、dappsを使ったり、スマートコントラクトを実行することが難しくなった」と同氏は事例として述べた。
イングランド銀行はスタッフが報告書で独自の見解や結論を述べることを認めている。だが、それらは銀行自体の見解を示しているわけではない。イングランド銀行は2020年1月、他の5つの中央銀行とワーキンググループを結成し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)についての研究成果やアイデアを共有していく。
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Speculation Undermines Crypto Prices and Utility, Says Bank of England Senior Economist