ヘスター・ピアースは証券取引委員会(SEC)の理事。ここでの見解は同氏のものであり、SEC理事会あるいは他の理事の見解を反映するものではない。
セーフハーバーの狙い
2月はじめ、私はトークン配布のための証券法セーフハーバーを提案した。動機は多くの仮想通貨起業家が抱える恐怖だった。
つまり、トークン配布は証券取引委員会(SEC)によって、証券の販売とみなされるのではないかという恐怖だ。ひいては、トークンは機能的な、あるいは分散型のネットワークに成熟できるだろうか?
トークンがネットワークの潜在ユーザー、開発者、参加者に配布され、それらの人々の間で自由に移動可能にならなければ、ネットワーク効果が発揮される可能性は低い。
証券法は無視されてはならないが、証券規制当局は自らの法律が作り出す難題を無視することもできない。
セーフハーバーは、トークン購入者を守り、イノベーションが花開くことを可能にする規制上の柔軟性を提供するという目的のバランスを取ることを目指している。
したがってセーフハーバーは、ニーズに応じた情報公開を求め、証券法の対詐欺規定の適用を守り、購入者が関心のあるネットワークに参加することを可能にすることでトークン購入者を保護する。
セーフハーバーはまた、ネットワーク起業家に対して、ネットワーク構築のための時間と規制上の柔軟性を提供する。
適用条件
セーフハーバーはネットワーク開発者に3年間の猶予期間を与える。期間中は連邦証券法の登録規定が免除され、その間に機能的な、あるいは分散型のネットワークへの参加と開発を促進できる。適用を受けるには、以下の条件を満たす必要がある。
●チームは、最初のトークンセールから3年以内に、分散化、あるいはトークンの機能性で定義される成熟性をネットワークが達成することを意図し、その目標を達成するために誠実かつ適切な努力を行わなければならない。
●チームは、自由にアクセスできる一般公開されたウェブサイト上に主要情報を公開しなければならない。
●トークンはネットワークへのアクセス、参加、開発を促進する目的のために提供、販売されなければならない。
●チームは、ユーザーのための流動性を生み出すために、誠実かつ適切に努力しなければならない。
●チームは、セーフハーバーを利用するためにSECに通知を提出しなければならない。
議論となっている2つのテーマ
セーフハーバーを発表した際、私はこれは未完成のもので、分散化した知恵のパワーから恩恵を受けるものであることを強調した。この提案が促すことを期待した思慮に富んだ議論はすでに始まっている。
反応は、提案を熱烈に支持するものから、不必要と拒否するものまで多岐にわたっている。
寄せられた改善案には、セーフハーバーが国内の他の法律や外国の法律に影響を与えるかどうかを明確にすること、発行者が第三者取引プラットフォームではなく、直接、流動性を提供することを可能にすること、特定の契約上の義務に関するセーフハーバーを作り直すことなどがあった。
議論となっている2つのテーマを簡単に取り上げよう。
第1に、一部の評論家はセーフハーバー提案が2017年の(新規コイン公開の)狂乱を再燃させることを懸念している。
だがセーフハーバーは、合法プロジェクトに対して前進するための安全な道筋を提供し、不正プロジェクトによる資金調達を困難にするように作られている。
またプロジェクトと開発チームについての具体的な情報公開を求め、セーフハーバーでのトークンセールに対するSECの対詐欺権限を保ち、犯罪を防止する。
第2の懸念事項は、3年間の猶予期間が終わる時点でトークンが証券かどうかを見極める明快なテストがないことだ。
猶予期間の終了時点に証券と見なされることを回避するには、ネットワークは分散化されている必要がある。つまり、単独の個人、個人の集団、共同統制下にある組織によって管理されておらず、かつ管理される可能性が合理的に低く、一方的に変更されないものでなければならない。
代わりに、ネットワークは機能的であってもよい。つまり、保有者はトークンをネットワークの実用性と一致した方法で利用することができるという意味だ。
提案の根底にあるもの
3年間の猶予期間の根底にあるものは、トークン取引が証券取引にあたるか否かを決定する際のニュアンスや曖昧さは、主にネットワーク開発の初期段階に存在するという前提だ。
ネットワークに対する管理が存在しないこと、あるいはネットワークの機能性は3年以内に示されなければならず、もしそうでない場合は、開発チームはSECの既存の規制構造に照らして、当初思い描かれたプロジェクトの実現可能性を明確に見極めなければならない。
初期に寄せられたこれらの懸念に対する私の予備的な反応は、それらや関連する問題に関するさらなる対話を妨げるものとして捉えられるべきではない。
私はロックバンド、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの言葉を借りて、人々に呼びかけ続ける。
「もしそうなら、教えてほしい。(中略)もしそうなら、私は知りたい」
もしこの提案がそうでないなら、私も知りたい。電話やメールで連絡してほしい。事務所に立ち寄ってほしい。SECのFinHubウェブサイトでフィードバックしたり、他の人も見られるように、オンラインでコメントを投稿してほしい。
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Illustration by Cheryl Thuesday
原文:Hester Peirce: Tell Me How to Improve My Safe Harbor Proposal