ビットコインのライトニングネットワーク「ますます中央集権化」──研究者が警告

ビットコインのライトニングネットワークは「ますます中央集権化」が進み、攻撃の影響を受けやすくなっている。セキュリティ研究者が新しい論文で主張した。

ビットコインが抱えるスケーリング問題の解決策と期待されているライトニングは速く、低コストな取引を実現する決済ネットワーク。ライトニングをより強固にするため、開発者と研究者はネットワークの欠点を見つけようとしてきた。

2月はじめに発表された論文「ライトニングネットワーク：ビットコイン経済の中央集権化への第2の道（Lightning Network: a second path towards centralisation of the Bitcoin economy）」は、ライトニングには少数のノードがますます相当な量のビットコインを蓄積する「不平等な富の分配」があると結論づけた。

10%のノードが80%をコントロール

具体的には研究者らは10％のノードがネットワークの80％の資金をコントロールしていることを明らかにした。この状況は崩壊の余地を生み出していると研究者らは警告した。

仮にビットコインの大部分が少数のノードに保有された場合、ネットワークは攻撃に対して脆弱になる可能性がある。これらのルーティングノードが取り除かれると、大きな穴ができてしまうからだ。

「ハブが削除されるとネットワークは多くのパーツに分割されてしまう。（中略）これは、いわゆるスプリット攻撃のターゲットになる可能性があることを示しており」、ライトニングが半分に分割される可能性がある。

念のためだが、ビットコイン技術のスタートアップ企業ブロックストリーム（Blockstream）のライトニングエンジニアで、この論文の著者の1人のクリスチャン・デッカー（Christian Decker）氏は、このような状況が続くことは心配していないと語っている。

この中央集権化への傾向は「一時的だろう」と同氏はツイートした。同氏と他のライトニング開発者は「オペレーターがネットワークの冗長性を簡単に構築できるよう取り組んでいる」。

仲介者の台頭

研究者らは決済の送信に使われるグローバルネットワークのノードが時間の経過とともにどのように進化するかを、18か月にわたってネットワークの状況を解析して分析した。

ライトニングネットワークでは、決済は目的地に到達するまでに複数のノードを経由する必要があるケースが多い。ほとんどのノードはネットワークの末端で受動的に決済を送受信する。

しかし中間の「ルーティングノード」は他のノードに代わってネットワーク内で決済を通過させるという重要な役割を担う。必要なら、サービスの対価として少額の手数料を請求できる。

研究者らはこうした中間ノードに注目し、少数のノードが決済の大きな割合を占め始めていることを発見した。

参入障壁

デッカー氏は、一般のライトユーザーがネットワークでルーティングノードを運用していないことは驚くべきことではないと付け加えた。

「我々はユーザーにルーティングノードを運用するために時間と労力を投資することを強制できない（するべきでもない）。我々にできるベストなことは、そのためのハードルを下げることで、おそらく自動化すること。我々はまだそこまで実現できていない。安定したノードのほとんどは、少数の技術に精通した人々が運用していることは驚くべきことではない」と同氏はツイートした。

しかし同氏は、ルーティングノードの運用は少なくともヘビーユーザーにとっては、多額の費用を必要とせず、セットアップは多少の時間で十分簡単であることを望んでいる。

「ある程度の知識を持つ愛好家がノードを設定し、他のオペレーターと積極的に競争できれば、我々は目標を達成したと考えている」