カナダ銀行は独自デジタル通貨の発行を計画してはいない──少なくとも現時点では。
CBDCを積極的に研究
カナダの中央銀行「カナダ銀行(Bank of Canada)」は、デジタル通貨が成功しない限り、独自デジタル通貨を発行する重大な必要性を見出していないとティモシー・レーン(Timothy Lane)副総裁は語った。
「デジタル時代のお金と決済(Money and Payments in the Digital Age)」と名付けられたスピーチで、同氏はカナダ銀行がどのように中央銀行デジタル通貨(CBDC)というアイデアに取り組んでいるかを語った。同氏の考えではキャッシュ(現金)は機能している。
もちろん、カナダ銀行はCBDCを最も積極的に研究している組織の1つであり、R3のブロックチェーンソリューション、コルダ(Corda)を使ったパイロットプロジェクトを行っている。
2019年5月、プロジェクトではシンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)と共同でクロスボーダー決済のテストを行った。
だが最終的に、カナダ銀行は成果を見出さなかった。
「我々は現時点でCBDCを発行する説得力のある理由はないと結論づけた。既存の決済エコシステムが最新で、目的に合ったものであり続ければ、それはカナダ国民にとって十分に役立つものであり続ける」とレーン副総裁は述べた。
リブラが成功すれば状況は変わる
民間の仮想通貨の広範な利用は、この予測を変える可能性があるとレーン副総裁は述べた。同氏は、そうした仮想通貨を「競争とプライバシーを損ない、カナダの金融主権に受け入れ難い挑戦を突きつける唯一のもの」と表現した。
最も明白な脅威はリブラ(Libra)だ。リブラのローンチについては現在、スケジュールは明らかになっていない。だがプロジェクトに関わる人物は、国際社会からの厳しい反応にもかかわらず開発は続いていると認めた。
「リブラがその約束を果たすかどうか、そもそも誕生するのかどうかを予測することは困難。しかしリブラは、カナダ銀行がお金の将来にどのように対応すべきかに影響を与える変革的な技術の好例」と副総裁は述べた。
今のところ、カナダ銀行はさらなる研究と、2020年2月に結成された共同の取り組みの一環として、イギリス、スウェーデン、スイス、日本、EUの中央銀行、および国際決済銀行(BIS:Bank of International Settlements)との協議を続けていく計画だ。
カナダ銀行はまた「カナダ全土の州や準州の地方自治体や主要な利害関係者」がCBDCを望んでいるか、どのような形を望んでいるかを知るために協議も行うと副総裁は語った。
全体としては、カナダ国民が最終的にある日、現金を放棄して、民間の仮想通貨を頼るようになれば、カナダは「利益ではなく、公益に導かれた組織が発行・分配を行い」、そして「中央銀行の収支とカナダのお金の価値を維持する高い信用に裏付けられた」デジタルキャッシュを必要とするだろうとレーン副総裁は結論づけた。
新しい5カナダドル紙幣を検討中
今回のスピーチは先週、ウクライナのキエフで開かれたCBDCをテーマにしたカンファレンスに集まった中央銀行の代表者らが表明した心理を繰り返すものだった。
オランダ、ウクライナ、ウルグアイなどの代表者は、中央銀行はおそらく、デジタル決済システムのためのブロックチェーンのようなものは必要としないとの共通認識を示した。
新しいデジタル通貨がどれほど人気だとしても、カナダ銀行は現金を強く信じており、「現金の利用を望むカナダ国民が使い続けることができるよう」現金を維持していくことを強く決意している。
特にカナダ銀行は、5カナダドル紙幣の新デザインを検討中だとレーン副総裁は述べた。
「カナダ銀行は、この新紙幣の肖像に誰を望むかをカナダ国民に聞くためのさまざまな協議を行っているところだ」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Image via YouTube
原文:Bank of Canada Won’t Issue Its Own Crypto Unless Libra Succeeds: Deputy Governor