銀行の持つ顧客データをもとにサービスを提供するフィンテック企業と銀行との間で、APIなどでシステムを連携させるための契約が進んでいる。銀行法で、金融機関と電子決済等代行業者との間で2020年5月までに契約を締結するよう求められているが、既に9割超の銀行が契約済または交渉中だという。
金融庁が2月25日に、2019年12月末時点の契約締結や交渉の状況を発表して判明した。
銀行とAPI連携させると利便性は向上するが……
2020年5月末まで猶予されているのは、家計簿アプリや会計サービスなどの参照系サービスについて(参照系のサービスは、あくまでデータを受け取る=参照する=ことができるだけで、更新はできない)。
これらの企業は、銀行との間でAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などによる接続を行い、利用者のパスワードを受け取ることで銀行システムとつなぎ、サービスを提供していた。
たとえば、家計簿アプリに銀行の情報を入力して利用するところを想像するとよいだろう。こうしたサービスは、利用者がいちいち銀行のオンライン口座にログインしてデータを参照する必要がないため便利な反面、情報流出の危険性もあることから、金融機関と事業者との間で個別に契約することが求められていた。
邦銀137行のうちオープンAPI対応意向の130行を調査
そもそも19年12月末時点で邦銀は137行あったが、そのうち7行はオープンAPIに対応しない旨を公表しており、発表では130行を対象としている。
同庁の発表によると、130銀行のうち、既に電子決済等代行業者と契約を締結している銀行は79行にとどまったが、交渉中まで含めると125行あった。契約締結も交渉もしていない5行は、APIの開放などの対応について「時期未定」としている銀行や、合併・システム統合などを予定している銀行だ。
契約締結済の79行のうち、5事業者以上との契約した銀行が9行あった。残りの70行は、1〜4事業者と契約済というわけだ。
10以上の銀行と契約した電子決済等代行業者が5業者
一方、電子決済等代行業者65業者のうち、32業者はサービスの性質上などの理由でインターネットAPI接続に関する契約締結を「必要ない」としている。残りの33業者のうち、28業者は既に締結済で、5業者が契約が済んでおらず交渉中だという。
こちらの内訳をみると、契約締結済の28業者のうち、10以上の銀行と契約したのが5業者、1または2行と契約したのが18業者などとなっている。
数ヵ月後の猶予期限までに、インターネットAPI接続が必要なすべての銀行・電子決済等代行業者が契約を済ませなければ、サービスを中断しなければいけないところが出る可能性もある。
文・編集:濱田 優
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