ビットコイン、過去7年で最大の急落——ECB資金供給もコロナ相場に歯止めかからず

コロナウイルスの拡大に対する懸念が、株式からジャンクボンド、仮想通貨に至るまであらゆる資産の売りを新たに引き起こし、ビットコイン(BTC)は7年間で最大の値下がりに苦しんだ。欧州中央銀行(European Central Bank)がパニック状態にある市場にさらなる資金を注入することを約束したにもかかわらず、このような事態となった。

時価総額でトップの仮想通貨であるビットコインは、2020年3月12日13時54分(協定世界時)時点で26%下落し、5863ドル(約62万円)の値を付けている。この値下がりによって、今年のビットコインの値上がり分はすべて消え、2019年5月以来最低水準まで値下がりした。少なくとも今のところ、ビットコインが米国債やゴールドといった、従来型市場に取って代わる資産に似た、安全な避難先資産になってきているという投資のナラティブは台無しになっている。

「市場が全体にかなり取り乱した状態になりつつあります。そして今日はキャッシュへの動きです」と、ニューヨークに拠点を置く仮想通貨分析企業デルフィ・デジタル(Delphi Digital)の主任アナリスト、ケビン・ケリー(Kevin Kelly)氏は語った。「ビットコインや仮想通貨全般はまだ、投資家の気持ちの中ではリスクカーブのずっと先にあります」

データ提供企業コインマーケットキャップ・ドットコム(CoinMarketCap.com)によれば、ビットコインの時価総額はたった一晩で、約1070億ドル(約11兆2400億円)へと、400億ドル(約4兆2000億円)近く減少した。

ドナルド・トランプ米大統領がヨーロッパからの渡航者を、3月13日から30日間入国禁止にすると発表した翌日、株式市場は下落した。米国株式のS&P 500インデックスは、7.7%下落した。

投資家らは、10年物の利回りが史上最低水準に近い0.67%へと0.15%ポイント低下した米国債に安全を求めているようだ。国債の利回りは、価格が上がると減少する。

欧州中央銀行による方策でも鎮静化せず

クリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁が率いる欧州中央銀行による、幅広く待ち望まれた会議は、追加で1200億ユーロ(約14兆円)の国債や資産を今年末までにかけて購入することを約束し、市場に流動性を注入する計画を承認したにも関わらず、投資家の不安を和らげることにほとんど役立たなかった。しかし、欧州中央銀行は利下げを行わなかった。

3月12日(現地時間)のビットコインの急落は、仮想通貨業界全体に広がり、イーサ(ETH)、リップル(XRP)、ライトコイン(LTC)も同様に下落した。

「ビットコインが25%値下がりするなら、より投機時な資産はすべて、同様に急落するでしょう。そしてそれが主要デジタル資産で今日起こっていることです」と、ニューヨークに拠点を置く仮想通貨分析企業デジタル・アセット・リサーチ(Digital Asset Research)の共同創業者、グレッグ・シポラロ(Greg Cipolaro)氏は述べた。

リサーチ企業スキュー(Skew)によれば、ビットコインの値下がりは、セーシェルに拠点を置く仮想通貨取引所ビットメックス(BitMEX)での、7億ドル(約735億円)以上の先物契約や他のレバレッジされたポジションの清算につながった。

ロンドンに拠点を置くデジタル資産企業ベクアント(Bequant)のリサーチ担当責任者デニス・ビノコウロフ(Denis Vinokourov)氏は、少なくとも5億ドル(約525億円)のビットコイン先物契約が、仮想通貨取引所で清算され、さらなる売り圧力につながり、値下がりを悪化させたと述べた。

シカゴマーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Exchange)の最新のデータは、アセットマネージャーやレバレッジドファンドと分類されていない、「その他の報告義務のあるもの」と分類されたトレーダーが「ロング」になったこと、言い換えれば、値上がりから利益を上げるために作られた契約を異常に積み上げていることを示している。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Cleaner sweeping the floor after the Wall Street stock market crash of 1929. Source: Wikimedia Commons
原文:Down 26%: Bitcoin Sees Worst Sell-Off in 7 Years as Coronavirus Spurs Flight to Safety
取材協力:Omkar Godbole