トヨタ自動車は3月16日、子会社を通じて、車と利用者をブロックチェーンで繋ぐ実証実験を実施したと発表。今後、自動車製造のプロセスや車社会のデジタル化において、ブロックチェーンが広く利用される可能性が高まる。
トヨタフィナンシャルサービスは昨年11月、ブロックチェーン企業のBUIDLと共同で、車両IDと個人IDを紐づけた実証実験を行った。車両IDには、車両情報のほか、整備や所有者の情報を書き込む。個人IDで、個人情報や所有権の管理を行い、車両IDと連携して自動的に認証や契約の締結を可能にするシステムを実装した。
個人IDは、グループ外でも利用できるよう共通IDとして開発した。秘匿化が必要な車両IDは、コンソーシアム・ブロックチェーンで管理する設計にした。開発にはコード監査を行う企業のQuantstampも加わった。
またトヨタファイナンシャルは、ブロックチェーン企業のScalarやDatachainとも実証実験を行った。Scalarの分散台帳を試し、Datachainとは車両価値の産出や、所有権移転の際にブロックチェーンを活用することの有用性を実証した。
トヨタ・ブロックチェーン・ラボが開発のアクセルを踏む
トヨタは2019年4月に、「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を設立して、同技術の研究を進めてきた。その研究テーマとして、利用者IDと車両IDの連携のほか、自動車製造プロセスにおける部品などのサプライチェーンの管理が挙げられる。また、ラボは、国内の金融機関が中心に開発を進める「デジタル証券」を含む「価値のデジタル化」の領域においても、研究を行なっているという。
トヨタは、同日に開いた記者発表会の中で、2020年度中に新たな実証実験を計画していると明かした。具体的な内容は不明だが、担当者はブロックチェーンの活用例として、スマホ決済アプリ「トヨタウォレット」や、交通アプリ「マイルート」との連携を示唆した。
トヨタ・ブロックチェーン・ラボは、トヨタ⾃動⾞、トヨタファイナンシャルサービス、 トヨタファイナンス、トヨタシステムズ、 デンソー、豊⽥中央研究所のグループ会社6社で構成されている。
自動車世界大手もブロックチェーン活用へ
欧米では、自動車メーカーのダイムラーやフォルクスワーゲンが、自動決済システムや車載電池に用いられる鉱物資源のサプライチェーン管理においてブロックチェーンの利用検討を進めている。
ダイムラー・トラックは2019年8月、トラックが自動的に充電料金を支払うシステムを、ドイツのコメルツ銀行と実験したと発表した。一方、フォルクスワーゲン・グループは2019年4月、リチウム電池に使われるコバルトなどの資源を追跡する活動に参加した。この活動には、フォードも参加している。
このほか2019年11月には、自動車のブロックチェーン活用に関する研究団体「MOBI」の枠組みの中で、ホンダ、BMW、ゼネラル・モーターズ、フォード・モーター、ルノーが通行料金や駐車メーターなどの自動支払いを実証実験している。
文:小西雄志
編集:佐藤茂
写真:Shutterstock
(編集部より:記事は、発表内容の詳細を追記、更新しました)